理系学生に向けた企業研究サイト「Tech-On! Campus」を開設してから,間もなく1年を迎えようとする5月某日。Tech-On!編集部では,月に一度の編集会議を開催していた。編集会議で常に議論となるのは,「コンテンツが理系学生に受けているのか?」。我々が所属する日経BP社は,BPが「Business Publications」を意味するように,長年「仕事に役立つ情報」をメインに,発信してきた。実は,学生に受けるコンテンツを作ることには,あまり自信がなかったりする。

 「もっと若手の記者に記事を書いてもらうのはどうかな?」。Tech-On! Campusの編集に携わっている人間は,揃いも揃って40代。学生の倍ぐらいの人生経験を積んできている。もちろん,経験が無駄になるわけではないが,学生目線の記事が書けるかというと,甚だ疑問となる。であれば,もう少し歳が近い記者に登場してもらおうとしたわけだ。

 「でも,今の学生事情は数年でかなり変化しているんじゃない」。確かに,リーマンショック以降,学生のライフスタイルや就職事情などは劇的に変わりつつある。入社数年の若手でも,その意識で書けるかどうかは,かなり怪しい。

 「どうせだったら,学生にレポートを書いてもらうのはどう? 学生自らが感じたままを執筆する。これなら,学生にストレートに伝わるはずでは」。「それはいけそうだね。学生記者が探る,日本の製造業の強さ!なんてのは」。「きっと製造業への就職を目指す学生の中には,製造現場に興味がいる人間も多くいるはず。早速,募集しよう」。

公募で学生記者を募る

 このように,とんとん拍子で決まったこの企画。編集部で重視したポイントは以下となる。

・取材対象は日本および世界に影響のあるものづくり企業
・学生が座学だけでなく,工場や開発現場などを訪問することで,生の技術者の声を収集
・学生目線で記事を執筆し,その業界の良さを他の学生に伝える

 Tech-On!編集部としては,これらの活動を通じてものづくりに興味を持ってくれる学生を一人でも多く増やすことが,製造業の活性化につながると期待し,今回の企画を実施した。

 学生達が取材する業界として,第1回目に選択したのは「半導体製造装置」業界。半導体製造装置産業と言えば,年々微細化する半導体プロセスを裏から支える重要な産業。しかし,一見派手に取り上げられる半導体と比較すると,その業界の内情はなかなか見えにくい。その一方で,日本の半導体製造装置の競争力は,世界においてもダントツと言っても過言ではない。この最先端の技術力は,きっと学生達にとっても日本の技術力を知るためには,多いに参考になるはずだ。

 早速,取材に協力してくれる半導体製造装置メーカーを探すとともに,あるセミナーに参加した学生を対象に「学生記者」の募集をかける。するとい嬉しいことに数名の申し込みがあった。今回の企画では,取材のスケジュールなどを鑑みて,3人にお願いすることにした。3人のプロフィールと学生記者を志望した理由を紹介しよう。

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