もちろん,これまで開発が進んできたデジタル家電も,もっと進化していくことだろう。より簡単に,より早くネットワークにつながるようになり,家庭の情報環境はさらに変化するに違いない。過去10年間を見ても,携帯電話の登場・普及によって我々のコミュニケーション手段は大きく変わった。これと同様のライフスタイルの進化が,あらゆるところでこれからも起こる。それを支えるのも,技術者たちが生み出す様々なテクノロジーである。

 こう話すと,技術者の仕事というのは,ハードウエアを開発することだと思うかもしれない。ハードウエアはもちろん大切だが,ソフトウエアの重要性が年々高まっていることも見逃せない事実である。DVDレコーダーや携帯電話機などの開発費を見ると,ソフトウエアの開発費がハードウエア以上に大きくなっているのだ。開発現場では,ソフトウエア技術者が足りない状況である。当然のことだが,ソフトウエアがなければ,ハードウエアは単なるハコに過ぎない。ハードウエアに命を吹き込むソフトウエアの開発も,ものづくりの中核といえる。

出身学科にとらわれずに企業選び

 技術者にはハードウエア,ソフトウエアを問わず,様々な分野で活躍できる場が広がっているのと同時に,多種多様な知識も求められるようになりつつある。前回述べたように自動車や医療/健康,環境/エネルギーなどの分野は,エレクトロニクスや機械技術,材料技術などが融合することで成立している。今後はこれらの技術がもっと融合し,いろいろな製品が開発されていくことだろう。

 従来,例えば自動車メーカーに入社するためには機械工学科の学生が優位な面があったが,現在,自動車メーカーは電気電子工学科や材料工学科などの学生の採用にも積極的である。というのは,ハイブリッド車や燃料電池車などを開発するためには,電気や材料といった分野の知識が求められるためだ。

 また今後,電機メーカーでは電気電子工学科出身の学生のみならず,建築学科の学生も必要とされるようになるかもしれない。今,テレビは家庭の居間などに置くモノだが,将来はもっと薄く,軽くなって,壁に埋め込まれるケースも出てくるだろう。これを実現するには,建材と一体になることを前提としたテレビ開発に取り組む必要がある。建築学科の学生がテレビ・メーカーに入社すれば,将来は面白いことができるに違いない。

 要は就職を考える際,「私は機械工学科だから,自動車メーカーで自分の知識を生かしたい」とか「電気電子工学科でしっかり勉強したので,大手電機メーカーで研究開発職に就きたい」といったように,短絡的に考えるのはやめたほうがいい。皆さんの目の前には,いろいろな分野で活躍の場が広がっている。なじみのない業界にこそ,自分の力を大いに発揮できる場が用意されているかもしれない。できるだけ広い視野で,企業選びをしてみてはいかがだろうか。

――次回に続く――