「基礎学力」「コミュニケーション能力」「考え方」を身につけておくべき

 続いて,技術者を目指す学生が会社に就職してから活躍するために,学生時代に身につけておくべきことについて聞いてみました。16個の選択肢から最大三つまで選んでもらいました(Q2)。

Q2 技術者を目指す学生が,学生時代に身につけておくべき能力とは何でしょうか(最大三つ選択)
上位三つの項目が,他の項目に比べて抜きん出る結果となった。回答数は1053。
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 結果は,上位三つの項目が30%を超える支持を集め,他の項目に対して水を空ける形になりました。最も多かったのは,「基礎的な学力」の38.8%です。連載の2回目で取り上げた「学生時代の研究や勉強は,今の仕事でどのように生きていますか」という質問に対しても,これを挙げる回答が多く見られました(前回の記事)。今回の結果はそれを裏付けるものと言えそうです。

 ただ,一つ前の「部下にしたい学生」について聞いた質問(Q1)では,「工学的な基礎知識が豊富」や「幅広い知識を持っている」といった項目を選択した人は,決して多くありませんでした。一見矛盾する格好といえます。「好奇心」や「臨機応変な対応力」といった項目も,逆の意味で,矛盾する形になりました。「部下にしたい学生」に関する質問では多くの支持を集めましたが,「学生時代に身につけておくべき能力」として挙げた回答者はそれほど多くありませんでした。解釈に悩むところですが,「好奇心や対応力といった人間としての資質は既に持っているものとして,その上でさらに基礎的な学力を学生時代に身につけておいてほしい」というのが,回答者の想いかもしれません。

 2番目に多かったのは,「コミュニケーション能力」の35.3%。3番目に多かったのは,「ものの考え方」の34.0%でした。これらも,連載の2回目で取り上げた先述の質問(学生時代の研究や勉強は,今の仕事でどのように生きていますか)に対する回答と,同じ傾向を見て取ることができます。今の仕事で生きている学生時代の研究や勉強については,基礎的な知識と共に,「論理的な思考」を挙げる回答が数多く見られました。コミュニケーションによって,自分の考えを伝えたり,相手の考えを理解したりするためには,この論理的な思考が欠かせません。また,第3位の「ものの考え方」も,「論理的な思考」によって磨かれるところは多いといえるでしょう。

 これらに続いて比較的高い支持を集めたのが,第4位の「語学力」(21.4%),第5位の「一般常識」(20.7%)でした。

 一方,下位の5項目は,他の項目に対して,やや少ない支持となりました。11位の「自分の得意分野の知識やスキル」(10.1%),12位の「自分でテーマを決める力」(8.1%)と「専門分野の知識」(同),14位の「集中力」(7.0%),15%の「事務処理能力」(1.1%)の5項目です。決して不要なわけではないと思いますが,「基礎的な学力」や「コミュニケーション能力」などの項目に比べると優先度は下がるという結果になりました。