健常な状態から要介護状態に移行するまでの中間的な段階のこと。加齢に伴って、ストレスに対する脆弱性が高まった状態で、生活機能障害を引き起こしやすいとされる。

 虚弱や老衰、衰弱、脆弱を意味する「Frailty」の日本語訳として、2014年に日本老年医学会が提唱した。筋力が低下したり嚥下機能が低下したりするなどの身体的問題や、認知機能が低下したり抑うつ状態になったりするなどの精神・心理的問題、さらには閉じこもりがちになるなどの社会的問題も内包する概念である。

 加齢に伴う機能低下を意味する言葉に「サルコペニア」があるが、サルコペニアは身体的問題に主眼を置いた概念である。加齢に伴って筋力や筋量が低下した状態のことをいう。ギリシャ語で筋肉を意味する「sarx」と喪失を意味する「penia」を組み合わせた言葉だ。

 現在、フレイルの判断基準は統一されていないが、一般的には(1)体重減少、(2)主観的疲労感、(3)日常生活活動量の減少、(4)身体能力(歩行速度)の減弱、(5)筋力(握力)の低下、の5つの項目を用いることが多い。3項目以上該当した場合はフレイル、1~2項目該当した場合は前フレイル(プレフレイル)とされる。

 フレイルは、早期に発見して適切な介入をすれば、健常な状態に戻すことができるとされている。そのため、食事や運動などによる予防法やスクリーニング法、健常な状態に戻すための介入法についてさまざまな研究や検討が行われている。

足圧バランス計でバランス能力をチェックする高齢者のイメージ
足圧バランス計でバランス能力をチェックする高齢者のイメージ
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 例えば、住友理工は福岡県糸島市でフレイルを簡易に測定する取り組みを開始したと2018年10月に発表した。九州大学 教授の熊谷秋三氏と九州大学 准教授の岸本裕歩氏らの研究成果に基づいて、フレイルを判定するという。

 具体的には、生活習慣に関する調査や運動機能の測定を行う。運動機能測定に関しては、住友理工が開発した「足圧バランス計」を使って重心の移動可能範囲を測定し、バランス能力を測る。フレイル状態を判定する方法に加えて、適切な介入によってフレイルを改善する方法についても検討していきたい考えだ。