オンライン医療の促進に向けて、処方箋交付と服薬指導に関する規制緩和が望まれている(出所:内閣府規制改革推進室)
オンライン医療の促進に向けて、処方箋交付と服薬指導に関する規制緩和が望まれている(出所:内閣府規制改革推進室)
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 薬剤師が、薬の服用に関する患者への情報提供と指導を、テレビ電話などオンラインの手段を使って行うこと。薬剤師法および医薬品医療機器等法では現状、服薬指導は対面で行うことが義務づけられており、遠隔服薬指導は国家戦略特区でのみ実施が許されている。2018年度診療報酬改定でオンライン診療に対する評価が新設されたことを受けて、遠隔服薬指導の規制緩和を求める声が高まっている。薬の交付と服薬指導を含め、一気通貫でオンライン医療を提供できるようにするのが狙いだ。

 オンライン診療において医師が患者に薬を処方する場合、院内処方であれば、医師がオンラインで処方し説明することを前提に処方薬を患者宅へ郵送できる。対して院外処方では、処方箋の原本を患者宅に郵送したうえで、患者がそれを薬局へ持参して対面での服薬指導を受ける必要がある。こうした運用では、患者が薬局に足を運ばなくてはならない点で、オンライン診療のメリットを十分に生かせないとの声が強い。

 この状況を変えていく上では、2つの規制緩和が必要だ。第1は、処方箋交付に関する規制緩和。現状では、医師は患者に処方箋の原本を提供し、薬剤師はその原本に基づいて調剤しなければならないとされている。2016年4月に電子処方箋が解禁されたものの、医療機関から患者に対して「電子処方箋引換証」と「処方箋確認番号」を発行し、患者がこれを薬局へ持参する形の運用にとどまっている。今後は電子処方箋の発行情報をオンラインでやり取りできるようにする規制緩和が望まれており、これにより紙の処方箋を介さず薬を交付できるようになる可能性がある。

 併せて求められる第2の規制緩和が、遠隔服薬指導に関するもの。現状では、処方箋交付がオンライン化されたとしても、服薬指導を対面で行う必要があるため、結局のところ患者は薬局へ足を運ばなくてはならない。厚生労働省は、国家戦略特区での遠隔服薬指導の実施に関する医薬・生活衛生局長名通知(薬生発1110第2号)を2017年11月10日に発出するなど、特区での実施は認めているものの実質的には運用が進んでいない。

 今回、オンライン診療が点数化され、その活用が見込まれる状況となったことで、遠隔服薬指導の規制緩和に関する議論が大きく動きだす可能性が出てきた。内閣府が2018年3月27日に開催した規制改革推進会議公開ディスカッションでは、オンライン医療の促進に向けた遠隔服薬指導の規制緩和がメイントピックの一つとなった。厚生労働省はこの場で、遠隔服薬指導の規制緩和に関する検討を前向きに進めていく姿勢を示した。同省医政局は2018年3月末にオンライン診療の運用指針をとりまとめるに当たり、遠隔服薬指導の実現には法改正が必要なため時期はまだ見えないとしながらも「方向性が(担当局から)示された段階では、オンライン診療の指針にも盛り込みたい」としている。