12月25日、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の洋上風力促進ワーキンググループ(WG)が初めて開催され、洋上風力発電の一般海域での運用開始に向けた詳細な制度設計の検討が始まった。

 同WGは、11月末日に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(以下、再エネ海域利用法)」が国会で可決され、12月7日に公布されたのを受け、実際の運用に向けた論点整理を行い、方向性を検討するために設置した。経産省資源エネルギー庁と国土交通省港湾局の共管となる。

 会合では、事務局案が示され、新法の大まかな流れが示された。政府が、関係者を含めた協議会を設置して「促進区域」を指定し、発電事業者を公募・入札により選定する。その上で、固定価格買取制度(FIT)上の認定を行い、最大30年の占有を許可する。

再エネ海域利用法に基づく、具体的な手続きの流れ
再エネ海域利用法に基づく、具体的な手続きの流れ
(出所:経済産業省資料)
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 すでに調達価格等算定委員会の場で、新法を使った洋上風力に関しては、入札により売電単価を決めることになっており、発電事業者を公募・入札した際の価格がそのままFIT上の調達価格になる。また、東北北部エリアの系統連系枠の募集プロセスでは、約2GW分の洋上風力が系統連系枠を確保しているが、仮に新法による入札で占有許可を得られなかった場合、その海域の占有事業者に連系枠が移行することになる。

 これまで一般海域の利用(占有)には、統一ルールがなく、都道府県の条例による占有許可は3~5年と短期のため、資金調達が難しかった。新法により、初めて最大30年間の長期占有が可能になり、プロジェクトファイナンスの組成が容易になると見られる。

 すでに一般海域では、洋上風力プロジェクトの計画が進んでおり、環境アセスメント手続き中の案件は、約540万kW(5.4GW)に達する。この中には、レノバなどが秋田県由利本荘市沖で進めている約100万kW(1GW)規模、日本風力開発などが青森県陸奥湾で進めている約80万kW(800MW)規模、同じく日本風力開発が同県つがる市沖で進める約80万kW(800MW)規模といったGWクラスの巨大プロジェクトもある。

 会合では、こうした先行しているプロジェクトを、入札の場でどのように扱うかが議論になった。委員からは、「リスクをとって先行開発している事業者には一定の優位性を与えるべき」という意見と、「制度の基本は公平性、公正性、透明性なので、先行者があまりにも有利になるのは避けるべき」との意見があった。

 このほか、促進区域を指定するに当たり、国が行う調査の内容として、風況、地質、海象、航行船舶、漁業、基地港湾、系統確保、他法に基づく区域などが示された。会合では、これらの項目のほか、事業者が自ら実施する調査とのすみわけ、自治体との連携の仕方、協議会に参加する関係漁業者の範囲などが議論になった。

欧州における基地港湾の例。洋上風力の部材を扱うデンマーク・エスビアウ港
欧州における基地港湾の例。洋上風力の部材を扱うデンマーク・エスビアウ港
(出所:経済産業省資料)
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 新法は、12月7日の公布から4カ月を超えない範囲で施行することになっている。経産省では、施行までに会合で示された論点を詰めて、政省令として公表し、実際の運用に移したいとしている。