爪の色や艶で健康状態がわかることは知られているが、手の爪の歪みや動きをモニタリングすることによって、健康や病気の進行状況を把握しようという研究が進んでいる。

 研究に取り組んでいるのはIBM Researchである。手の爪の歪みや動きを絶えず測定できる「爪装着型センサー」のプロトタイプを開発し、その測定結果によって握力を測る指標とする。2018年12月21日付け「Scientific Reports」に掲載された研究論文で詳述している。

健康状態などを把握できる爪装着型センサー(写真提供:IBM)
健康状態などを把握できる爪装着型センサー(写真提供:IBM)
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 握力は幅広い健康問題を判断できる有効な指標とされてきた。例えば、パーキンソン病患者に対する治療薬の効果や、統合失調症患者の認知機能のレベル、患者の心臓血管の健康状態などと握力の関係性が指摘されている。また、全死因死亡や心血管死、心血管疾患の簡便で安価なリスク層別化法であることが示されている。

 指でモノをつかんだり、握ったり、指を曲げたり伸ばしたりしても爪は一定のパターンで変形(歪んだり、動いたり)するという。変形は10μmに満たないことがほとんどだが、ひずみゲージ・センサーを使うことで検知できる。それが爪装着型センサーだ。握力計を使って実験を行った結果、握り方を変えても握力を正確に予測できる十分なシグナルが爪から得られることを実証したという。

 爪の変形から繊細な指の動きを解析できることも分かったという。鍵を回したり、取っ手を回してドアを開けたり、ドライバーを使ったりした際に、回内運動や回外運動を伴う日常の動作の判別が可能になる。さらに、指で文字を書くなど繊細な動作も把握できる。ニューラルネットワークのトレーニングを繰り返して、センサーを装着した指で書いた数字の検出精度は94%だったという。