慶應義塾大学は、オンライン診療を精神科領域で実施するための国内初となる手引書をWebサイト上で公開した。オンライン診療を開始するための手順や診療の質を保つための手引書を作成することで、「精神科のみならず多くの診療科でオンライン診療が広がれば、通院しづらかった患者が医療にかかりやすくなる」とする。

 医学部精神・神経科学教室の岸本泰士郎専任講師らの研究グループが、アメリカ遠隔医療学会(ATA)の協力を得ながら、医師・法律家・技術専門家による協議を重ねて作成した。遠隔医療を法令にのっとり正しく開始し、安全に、診療の質を保ちながら提供できるようにするための医師向けの手引書は、海外にはあったが国内にはなかったという。

 手引書は「診療」「法律」「技術」に関する3つのセクションから成る。診療のセクションでは、遠隔医療を開始するための準備事項や診療の質を保つためのポイント、プライバシー保護、緊急時の対処法などについてまとめている。法律と技術のセクションでは、それぞれ遠隔医療に関連する専門的事項につき、医師が理解しておくべき点についてまとめてある。

 遠隔医療に関連する法令やガイドラインは数多く存在するが、膨大で難解のため医師が全てを理解するのは難しかった。またこうした法令やガイドラインは、診療内容に根差した医療の質を保つための工夫については触れられていなかった。今回の手引書によって、精神科医療に携わる人が参考にして遠隔診療を始めやすくなり、安全で質の高い医療を届けやすくなるとする。