「今後5年で、カメラやセンサーはかなり多くの新車に搭載されていく。きちんと性能を評価できることが我々の競争力になる」。デンソー常務役員で技術開発を担当する加藤良文氏の読みだ。運転支援システムや自動運転に向けた部品において、「品質の作り込み」(同氏)に注力する開発方針を示した。

 品質を作り込む上で重要な拠点になっているのが、デンソーが愛知県岡崎市に構える「額田テストセンター」である。筆者がここを訪れたのは2016年12月8日。名古屋駅からバスに揺られること1時間半。人里離れた山奥に、東京ドーム約21個分に相当する総面積100ヘクタール(1km2)の施設が現れた。

 額田テストセンターの開設は1984年。全長2.6kmの周回路を始め、浸水路や登坂路など、様々な環境を模擬した部品の耐久性評価を実施してきた(図1)。積み重ねてきた30年の歴史をあちらこちらに感じながらコースを見学していると、“白さ”を保った建屋が目に飛び込んできた。「自然環境試験棟」——。建屋の外壁にはこう記されていた。

図1 デンソーの「額田テストセンター」
図1 デンソーの「額田テストセンター」
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 自然環境試験棟の最大の特徴は、夜間と雨天を再現できることだ。交通事故総合分析センター(ITARDA)によると、歩行者死亡事故の約7割が夜間に起こっている。晴天に比べて視界の確保が難しい雨天も、事故を起こしやすい。