8Kスーパーハイビジョン技術(以下、8K技術)を活用した遠隔医療が、臨床に応用可能かどうか。その範囲や医学的な効果の検証が、2016年12月に始まる。NTTデータ経営研究所、NHKエンジニアリングシステム、NHKエデュケーショナル、NTTコミュニケーションズ、スカパーJSATが、総務省から受託した「8K技術を活用した遠隔医療モデルに関する実証」として実施する。

8Kスーパーハイビジョン画質(左)とハイビジョン画質(右)の画像比較
8Kスーパーハイビジョン画質(左)とハイビジョン画質(右)の画像比較
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 日本発の次世代放送技術として開発された8K技術は、従来のハイビジョン画質の約16倍に当たる3300万画素の超高精細画像を撮像・記録・伝送・表示することが可能。画素の密度は人間の網膜に迫ると言われている。8K技術によって、高い臨場感と実物感を保持した医療現場の映像を遠隔地に伝えられるため、従来の遠隔医療では対応が困難だった細かな病変の発見などが期待される。

 今回の実証では、8K技術を活用した遠隔医療のモデルとして、「遠隔病理診断モデル」と「遠隔診療支援モデル」を選定。医学的観点からの効果や技術的な課題などを検証する。遠隔での病理診断(テレパソロジー)にデジタル画像を用いる遠隔病理診断モデルでは病理診断の精度向上を、遠隔での画像連携や他地域医師の定期的な訪問が行われている遠隔診療支援モデルでは診療支援の精度向上や訪問医師の負担軽減などを目指す。

遠隔病理診断システムの概要と実証のイメージ
遠隔病理診断システムの概要と実証のイメージ
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遠隔診療支援システムの概要と実証のイメージ
遠隔診療支援システムの概要と実証のイメージ
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 実証実験では、各モデルで8K映像と実物を観察した場合の診察・診断結果の相違有無を評価する。さらに、撮影した8K映像を録画し、2Kカメラや4Kカメラで撮影した場合のシミュレーション映像などと比較評価する予定だ。

 遠隔病理診断モデルでは、8Kカメラをセットした遠隔操作顕微鏡システムを構築し、虎の門病院と東京大学医学部附属病院との間で2017年1月下旬から実証実験を実施。遠隔診療支援モデルでは、8Kカメラを活用した遠隔医療システムを構築し、映像伝送回線として衛星通信を利用。長崎県の離島にある上五島病院と実際に患者を診療する長崎大学病院との間で、2016年12月中旬から検証を行う。