高額紙幣の廃止を打ち出した印ナレンドラ・モディ首相
高額紙幣の廃止を打ち出した印ナレンドラ・モディ首相
(出所: narendramodiofficial / CC by SA)
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 インドのモディ政権が先月突然、発表した高額紙幣の廃止(廃貨)は、同国経済に混乱をもたらしている。だが、電力分野や太陽光など発電事業者にとってはプラスに作用する可能性がある――。12月4日、Mercom Capital Group社がこのような見解を発表した。同社は、クリーンエネルギー分野における調査やコンサルティングをグローバルに手がけている。

 同社によると、インドでは今回施行された500ルピーおよび1000ルピーの旧紙幣の廃貨に伴い、滞納されていた電気料金の支払いが急増しているという。

 これは、モディ政権が2016年12月31日の期限までは滞納されている電気料金を旧紙幣で支払うことを認めているからである。2017年になると旧紙幣による支払いがすべて無効になる。このため、「どうせ無効になるのであれば、支払いを先延ばしにしていた電気料金でも支払うか」といった消費者が増加しているとみられる。

 これまで電気料金の滞納に悩まされていた各州の配電事業者にとって、今回のモディ政権の廃貨施行は、思わぬ援軍となっている。マハラシュトラ州配電会社(MSEDCL)のある職員は、「廃貨の発表以来、各州の配電事業者では旧紙幣による支払いが1週間で10億ルピー(約16億7000万円)を超えている。配電事業者の財務状況が良くなるため、好ましい兆候だ」と述べている。

 同時に、ブラックマネーの保有者に対して実施された税金や罰金の恩赦により、インド政府は滞納されていた多額の税金を回収することに成功している。このため、政府が太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電インフラの建設に、急増した手元資金を振り向けられるという。

 新・再生可能エネルギー省(MNRE)のある職員は、「インドでは、決済の大半が現金。このため、短期的には廃貨によって小規模事業者による用地の取得が困難になるといった影響が出る。長期的には、配電事業者による電気料金の回収、金利の下落、ドル高ルピー安による国外からの投資の増加などによって、プラスになるだろう」と述べている。

 Mercom Capital Group社のRaj Prabhu最高経営責任者(CEO)は、「廃貨は混乱をもたらしたが、再生可能エネルギー業界にとっては全体的にプラスに作用する。太陽光パネルなどのコストが急速に下落していることと合わせると、これまでは疑問視されていた太陽光発電プロジェクトが実現可能になっている。ただ、こういった状況を政府がどう生かすかを、見極める必要がある」と指摘している。