経済産業省・資源エネルギー庁は11月21日、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会で、固定価格買取制度(FIT)後、自立を促す多様な太陽光発電の活用法に関して議論し、「自営線」活用などの有望性が強調された。

 FITによる買取期間の終了後、需要家の敷地内(オンサイト)の太陽光設備は、自家消費に移行することが最も経済性が高くなる。一方、需要家の敷地外(オフサイト)に設置する野立て型太陽光は、卸電力市場などを通じて小売電気事業者などに売電することになり、その場合、託送料を負担して一般送配電事業者の電力系統を使うため、事業性が大きく損なわれる。

 21日の小委員会では、事務局(経産省)から、「大口需要家などの場合、オフサイトに設置された再エネ電源から直接、供給を受けるという選択肢もあり得る」とし、「オフサイトの非FIT再エネ電源を自営線で引き込むことは、電気事業法上、問題がなく、レジリエンス対策にも効果的」との見解を示した。

 これまでの議論の中で、「大規模事業所に自営線で再エネ電源を引き込もうとする場合、制限が非常に多く、運用上、事業所への複数引き込みはできないと認識されている」との問題点が指摘されてきた。

 今回の会合では、「自家消費と系統連系を共存させる場合、さまざまな商慣習やルールが問題として存在しているのであれば、その障害を取り除くべき」とした。

 そして、先行事例として、北海道石狩市のデータセンターにオフサイトの非FITの太陽光発電所から自営線を引き込み、全量を自家消費しているケースを紹介した(関連記事:太陽光の電力を直流送電してデータセンターで活用)。海外でも、米ノースカロライナ州のデータセンターに20MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)と燃料電池(10MW)から送電している例があるとした。

北海道石狩市のデータセンターでの自営線による太陽光自家消費の仕組み
北海道石狩市のデータセンターでの自営線による太陽光自家消費の仕組み
(出所:さくらインターネット)
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 メガソーラーの発電電力を系統網を介さずに自営線を使って供給しているケースとしては、このほか福島県相馬市で、IHIなどによる実証事業の一環で、導入・運用している(関連記事:相馬市の「地産地消型メガソーラー」、自営線で下水処理場に送電)。

 また、地域における再エネの活用モデルとして、国内における地域新電力やドイツのシュタットベルケを紹介した。その上で、「地域分散型エネルギーシステムを支える託送サービスや費用負担のあり方について、引き続き議論していく」とした。

 現在、一般送配電線事業者の持つ送配電線を使って、再エネ電気を近くの需要施設に供給する場合、全国一律の託送料金が、大きなコスト負担になっている。

 そのため地域の再エネ電気を地域社会で安く利用するには、託送料金の需要地近接割引のような仕組みが不可欠になる。FIT後の再エネを地域で効果的に活用しつつ、発電事業の事業性を高めるための制度改革として、今後、託送サービスのあり方が本格的に議論される可能性がある。