米国のエネルギー事業大手であるAmerican Electric Power(AEP)社は11月3日、今後3年間で18億ドル(約2050億円)を再生可能エネルギー設備に投資する計画を発表した。

 同社が2018年の業績見通しと、設備投資に関する計画の一環として明らかにしたもの。2018年から2020年までの3年間に、182億ドル(約2兆70億円)を設備投資にあてるとし、その内72%の131億ドルを送配電事業に、18億ドルを再エネ事業にそれぞれ割り当てる。

 再エネ設備の内訳は未公表だが、今後7年間で風力と太陽光の発電設備の合計3570MW(3.57GW)を増設するとしている。過半は風力発電となるが、メガソーラー(大規模太陽光発電所)など太陽光も1GW以上を占めると見られる。

 同社は今回発表した設備投資計画とは別に、2018年に規制当局の認可を得る予定の風力発電プロジェクト「ウインド・キャッチャー(Wind Catcher)」をオクラホマ州で検討中という。同プロジェクトは総額45億ドル、出力2000MW(2GW)で、完成を予定する2020年の時点で、米国最大の風力発電所になると見込む。

 AEPはオハイオ州コロンバスを拠点に、11州の約540万件の顧客にエネルギーを供給している。発電事業でも全米最大規模の事業者の1社であり、総設備容量は3万3000MW(33GW)、そのうち再生可能エネルギーは4200MW(4.2GW)。

 同社は2016年11月にも再エネを含む事業計画を発表していたが、その時点では風力500MW、太陽光400MWなどを新規に導入するとしていた(関連記事)。今回の発表を当時と比較すると、風力と太陽光の容量の合計で約5~6倍の増強となっている。

 AEPの拠点があるオハイオ州は、米国でも石炭の産出量が多い地域の一つである。同社も従来は電源構成で石炭火力の占める比率が高く、大気汚染や温室効果ガスなどの排出で批判の矢面に立たされることもあった。オバマ政権下ではクリーンコール技術を推進する業界団体に加盟し、気候変動対策に反対する姿勢も示していたという。

 化石燃料への回帰を公言するトランプ政権の誕生後も再生可能エネルギーの導入量を大幅に増加するという同社の事業戦略は、持続可能性や環境への配慮だけでなく、経済性の点でも風力や太陽光が化石燃料に見劣りしない水準となったことを意味していると思われる。