国立がん研究センターとJVCケンウッド、シスメックス、第一三共は2017年10月16日、がんの診断と治療の質の向上に向けた共同研究を開始したと発表した。体内の細胞が放出するエクソソームと呼ぶ微粒子に着目した、がん診断技術を確立することを目指す。

 近年、がん患者ではがんの特徴を反映したエクソソームが血液中に増えていることが明らかになっている。国立がん研究センターは2017年8月、これを利用したがん診断技術に関する臨床研究を同センター中央病院で開始している(関連記事1)。今回の共同研究では、HER2など特定のたんぱく質をもつエクソソームを測定できるようにし、腫瘍組織だけでなく血液からも治療法や治療効果を判断できるようにすることを目指す。

 参画企業のうち、JVCケンウッドは、保有するエクソソーム測定装置を使って特定のエクソソームを検出する技術を構築する。同社は光ディスク技術を応用したエクソソーム定量システム「ExoCounter」を開発しており、事業化に向けた取り組みを進めている(関連記事2)。今回の共同研究ではこのシステムを発展させて、がん由来の特定のエクソソームを高精度に検出する技術を提供するという。

 シスメックスは、遺伝子やたんぱくの測定技術を提供。JVCケンウッドのエクソソーム測定装置を医療現場で活用できるようにするための、信頼性確保を含めた開発面での協力も担当する。

 国立がん研究センターと第一三共は、エクソソームの測定データを患者の診断や治療に活用していく。第一三共はかねて抗がん剤の開発に力を入れており、副作用のリスクを減らしつつ高い効果を示す患者を薬剤投与前に選別できる方法や、治療効果を血液で判定できる方法を探索してきた。エクソソームは、そうした目的での情報源として注目しているという。