作製したタンデム型太陽電池の断面写真
作製したタンデム型太陽電池の断面写真
下の赤い層が短波長の光向け、上の褐色の層が長波長の光向けの層(写真:Giles Eperon)
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 米Stanford Universityと英University of Oxfordの研究者は、塗布技術で作製したタンデム型ペロブスカイト太陽電池で変換効率20.3%と高い値を示し、同時に高い耐久性を示したと発表した。将来的には変換効率30%超も見込めるとする。学術誌「Science」に論文が掲載された。

 タンデム型太陽電池は2層の太陽電池を用いて太陽光をより有効に利用し、変換効率を高める技術である。具体的には1層目で太陽光の主にやや短波長の光や紫外線を吸収させ、2層目でやや長波長の光や赤外線を吸収させる。

 既存のタンデム型ペロブスカイト太陽電池の中には、Si系太陽電池の上にペロブスカイト太陽電池を積層したという例がある。今回は、そうした例とは異なり2層が共にペロブスカイト太陽電池である。各層はそれぞれガラス基板上に塗布技術で作製し、それらを貼り合わせてタンデム型とした。

 2層を共にペロブスカイト太陽電池にする上で難しかったのが、2層めの作製だったとする。今回、単独で14.8%の変換効率を備えた、主に赤外線対応のペロブスカイト太陽電池を鉛(Pb)を用いた一般的な材料に加えて、スズ(Sn)やセシウム(Cs)を用いることで実現。それをタンデム型に用いることで、変換効率20.3%を得たとする。

 ペロブスカイト太陽電池、特にSnベースの同電池には、耐久性が非常に短いといった課題があったが、今回の作製例では、大幅に耐久性を高めたという。具体的には、大気圧で摂氏100度の環境下に太陽電池を4日間置く実験でも高い耐久性を示したとする。

 論文の著者の一人のUniversity of Oxford、Professor of Physics ProfessorのHenry Snaith氏は、「材料の最適化による電流の最大化などはこれからで、変換効率30%超を実現する道筋が見えてきた」とする。