図●IPCCが公開した特別報告書「Global Warming of 1.5℃」の表紙
図●IPCCが公開した特別報告書「Global Warming of 1.5℃」の表紙
(出所:IPCC)

 国際連合の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10月8日、気候変動に関する特別報告書「Global Warming of 1.5°C(1.5℃の地球温暖化)」を公開した()。

 同報告書は韓国・仁川(インチョン)で開催されたIPCC総会で承認されたもの。2018年12月にポーランドのカトヴィツェ(Katowice)で開催される「カトヴィツェ気候変動会議」において、同報告書は重要な科学的情報を提供するだろうとしている。

 地球の温暖化を2℃以上ではなく1.5℃以内に抑制することによって、さまざまな気候変動の影響を回避できる可能性があると同報告書は指摘する。

 例えば、1.5℃以内の温暖化の場合、グローバルの海面上昇は2℃の場合と比較して10cm低くなる。北極海の夏季における全面的な海氷融解の頻度は、1.5℃以内の温暖化の場合は100年に1度と試算されるが、2℃の温暖化では少なくとも10年に1度と大きく異なる。サンゴ礁の破壊も1.5℃以内の温暖化の場合は70~90%に留まるが、2℃の温暖化ではほぼすべて(99%以上)のサンゴ礁が死滅するという。

 同報告書はまた、危険な気候変動を回避するためには、緊急かつこれまでにないレベルの対応が必要になると指摘する。再生可能エネルギーの重要性についても言及しており、2050年までに電源の70~85%を太陽光発電などの再エネ由来にする必要があるとしている(関連記事1)。

 欧州の太陽光発電産業の業界団体であるSolarPower Europeでコミュニケーションズ・ディレクターを務めるKristina Thoring氏は、「『パリ協定』によって、我々は社会の低炭素化・脱炭素化に取り組まなければならない。従来のアプローチのままでは駄目だ。解決策は明らかで、化石燃料を太陽光で置き換えることは温室効果ガスの排出量を削減するうえでもっとも早くコスト効果に優れた手段の一つだ。太陽光発電は年間2~3億tのCO2排出量を抑制可能であり、これはフランスの温室効果ガス排出量の合計に匹敵する」とのコメントを発表している(関連記事2)。