筑波大学附属病院と茨城県立医療大学付属病院は2016年9月30日、脳卒中患者の歩行能力回復を目的とする、CYBERDYNEのロボットスーツ「医療用HAL 単脚モデル」の医療機器承認のための医師主導治験を開始した。

 両病院はCYBERDYNEと連携し、脳卒中患者の歩行障害の新しい治療を目指した臨床研究を2013年から実施してきた。今回の治験ではこれまでの研究成果を基に、医療用HALの治験モデル「HAL-TS01」(治験用機体識別番号)の医療機器承認を目指す。日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、筑波大学附属病院が中心となって茨城県立医療大学付属病院など7施設で実施予定である。

 脳卒中患者の歩行障害に対する従来の治療は、障害の程度によっては歩行能力の回復に限界があった。これまでの臨床研究でこのような患者に医療用HALを使ったところ、歩行能力回復の従来の限界を超え、さらなる回復を期待させる結果を得たという。

歩行能力回復の上乗せ効果を検証

 今回の治験では、医療用HALのこうした「歩行能力回復の上乗せ効果」を検証する。通常の治療では歩行能力の十分な回復が得られない患者を対象に、前観察期、治療期、後観察期の3期で構成する。治験実施については筑波大学附属病院の治験審査委員会の承認を受け、2016年8月31日に医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験計画届を提出済みだ。

 前観察期では、通常の治療を行っても歩行速度の十分な回復が得られず、回復が滞ってくる状態を確認する。治療期では、そのような患者をHAL治療群と対照群に分け、HAL治療群では医療用HAL 単脚モデルを利用したサイバニック治療を、対照群では歩行に関する従来型治療を5週間にわたり施行する。治療期終了時に歩行速度を評価し、治療効果を確認する。後観察期では従来型治療を行い、治療効果の継続を確認する。

 「医療用HAL 両脚モデル」は、筋萎縮性側索硬化症や筋ジストロフィーなど緩徐進行性の神経筋難病疾患患者を対象とした新医療機器として、2015年11月25日に薬事承認されている(関連記事)。これに対し今回の治験の対象疾患である脳卒中は、患者数が非常に多く、麻痺などの後遺症によって介護が必要になる原因疾患の第1位でもある。