国際エネルギー機関(IEA)は9月5日、技術革新(イノベーション)やデジタル化といった、いわゆる「無形資産」における投資が、今後数十年にわたるエネルギーの供給や利活用のための技術開発を活性化するだろうとの分析を発表した。

 IEAのエネルギー技術アナリストであるサイモン・ベネット氏が、同機関の「World Energy Investment 2018(WEI2018)」や企業の研究開発部門を率いる管理職への聞き取り調査に基づいて論評したもの1)

 エネルギー分野における変化の方向性を示す指標は、投資の動向である。とりわけ、長期間保有される無形資産であるソフトウエア、R&D、データ、経営の効率性、ブランド価値などへの投資が成長しており、将来的な生産性向上の最大の源泉になるとしている。

 欧州では、無形資産への投資額がGDP比でも一定の割合となるまで増加している一方、従来型の有形固定資産への投資額は減少している。また米国では無形資産への投資が、既に経済をけん引しているという。

 ベネット氏は論評で、ベンチャーキャピタル(VC、投資ファンド)の投資は一般に基礎研究への資金を供給しないものの、顧客の満たされないニーズを満足させ、既存のエネルギー秩序を覆すようなエネルギー技術の新しいスコープがどこにあるかを考えるうえで良い指標であると指摘する。

 エネルギー技術へのVCによる投資は旺盛であり、2018年の第2四半期までの投資額はこれまでで最高を記録したという。分野別では、2018年の前半に最も投資が多かったのは太陽光をはじめとした再生可能エネルギーだったが、現在は電気自動車など運輸・交通にシフトしている。

 このようなエネルギーの供給側の技術から需要側の技術への移行が進んだことから、「コネクテッド(繋がる)ビル」に関連した省エネルギー技術への投資が、再エネへの投資を2018年の現時点までに上回ったという。

 同氏はまた、事業会社が保有し、VCよりわずかながら長期的な視野で投資される「コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)」でも、同様の傾向を指摘している。

 中でも石油・ガス業界で目立つトレンドは、同業界の既存のインフラを補完する技術領域から新事業の領域へのシフトという2)。具体的には、バイオ燃料、二酸化炭素回収・使用・貯留(CCUS)、その他の化石燃料供給に関連する技術への投資が減少しているとする。

 また、電力業界はグローバル規模では2017年に7億ドルを投資、これまでの最高だった2013年の記録を更新したという。これまで投資が活発化していた分野としては太陽光発電、蓄電池、スマートグリッドなどの技術だったが、それが2017年には、運輸・交通が全投資額の50%、風力発電が同25%を占めたとしている。