講演する孫正義・自然エネルギー財団会長
講演する孫正義・自然エネルギー財団会長
(出所:日経BP)
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 孫正義・自然エネルギー財団会長(ソフトバンクグループ社長)は9月9日、同財団の設立5周年記念シンポジウムで講演し、アジアスーパーグリッド構想の現状を明らかにした。

 5周年記念ということで、まず、ソフトバンクグループにおける再生可能エネルギー発電への取り組みや、同財団を設立した経緯などを振り返った。

 ソフトバンクグループが、再エネ発電やアジアスーパーグリッド構想に取り組むきっかけとなったのは、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故にある。

 孫氏は、「原子力発電所の事故は、ほんとうに怖かった」と、何度も繰り返した。「怖かった」というのには、いくつかの意味があるという。

 まず、「事故そのものによって、広い地域の多くの命が奪われたり、危険にさらされる可能性があったこと」。例えば、「東京にまで影響が及んでいたならば、どのような事態が生じていたのか」と、原発事故のリスクについて、改めて強調した。

 そして、「東日本大震災全体を含めて、地域全体の隅々まで、被災時にも通じやすいような、より強固な通信網を築いていれば、津波などによる被災者が、一人でも少なくなったのではないか」。携帯電話の通信事業者としての責任も吐露する。

 当時、孫氏はまず、福島の原発事故の影響で、近隣地に避難している人々に、より遠い地域に避難してもらうために、交通機関や各地の地方自治体のトップと直接交渉し、実現するめどをつけ、福島に向かい、現地の避難者たちに、県外への避難を呼びかけたという。しかし、現地の避難者たちは、「先祖代々から生まれ育ってきた地を離れたくないと固辞し、実現しなかった」と、当時を振り返る。

 並行して考えていたのが、こうした原発事故を二度と起こさない社会にするため、代替のエネルギーへの取り組みだった。