「DDFAはクラスDデジタルアンプの優れた電力効率を維持しながら、上位のアナログアンプと同等の優れたオーディオ特性を達成するものだ」――。米Qualcomm社のデジタルアンプ技術「DDFA」(Direct Digital Feedback Amplifier)のProduct Marketing ManagerであるDamien Vandenbeyvanghe氏は、ディーアンドエムホールディングスのオーディオブランド「DENON」(デノン)が2017年8月29日に発表したプリメインアンプ「PMA-60」の記者説明会に登壇し、DDFAの優位点を解説した。

Qualcomm Technologies International社DDFA担当Product Marketing ManagerのDamien Vandenbeyvanghe氏
Qualcomm Technologies International社DDFA担当Product Marketing ManagerのDamien Vandenbeyvanghe氏
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 一般的なクラスDのデジタルアンプは、取り込んだデジタル音源をアナログ信号にいったん変換して、そのアナログ信号からPWM(パルス幅変調)によってPWM波形を生成する。「アナログ変換の品質はDAC(digital-to-analog converter)に依存しており、ここで音質が劣化することが多い」(Vandenbeyvanghe氏)。

 このPWM波形は増幅され、その一部はPWMモジュレーターにネガティブフィードバックされる。ネガティブフィードバックは増幅率から周波数の影響を排除して周波数特性を改善するが、その効果は出力(波形の振幅)の大きさに左右される。PWM波形からローパスフィルターによってオーディオ信号を取り出すときに、ローパスフィルタ―の非線形特性によって音が歪む可能性もある。

 DDFAでは取り込んだデジタル音源をそのままPWMモジュレーターで変換し、DACによる音質の劣化を防ぐ。増幅したPWM波形およびローパスフィルタ―を通過したオーディオ信号と、デジタル音源をアナログ変換したリファレンス波形との差分を取り、その差分をデジタル変換したものをPWMモジュレーターにフィードバックすることで、周波数特性を改善しながら出力の変化が音質に影響を与えることを防ぐ。リファレンス波形との差分をフィードバックすることで「ローパスフィルターの特性が音質に与える悪影響を取り除くこともできる」(同氏)という。

DDFA搭載デジタルアンプのアーキテクチャー
DDFA搭載デジタルアンプのアーキテクチャー
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 DDFAは英CSR社が10年ほど前に開発し、Qualcomm社が2015年にCSR社を買収したため現在はQualcomm社が所有する。PMA-60の説明会では、20Hzから20kHzの周波数を横軸、THD+N(Total Harmonic Distortion + Noise:全高調波歪み率+雑音)を縦軸とするグラフを提示。DDFAがこれら周波数の全域にわたってTHD+Nを0.001%前後に抑えていることを示した。

周波数を横軸、THD+Nを縦軸とするグラフ
周波数を横軸、THD+Nを縦軸とするグラフ
20~20kHzの全域にわたってTHD+Nを0.001%前後に抑えている
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