図1:「左右列非対称自動調心ころ軸受」
図1:「左右列非対称自動調心ころ軸受」
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図2:開発品(左)と従来品(右)の断面図
図2:開発品(左)と従来品(右)の断面図
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図3:風車内部の構造例(左)と主軸用軸受けへのアキシャル荷重負荷(右)
図3:風車内部の構造例(左)と主軸用軸受けへのアキシャル荷重負荷(右)
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 NTNは風力発電装置の主軸向けに、長寿命化と耐摩耗性の向上を図った軸受け「左右列非対称自動調心ころ軸受」を開発した(図1、ニュースリリース)。軸受け内部のころを左右列で非対称とすることにより、計算寿命を従来品比で約2.5倍に延ばすとともに、接触面圧(P)と転がりすべり速度(V)を掛け合わせたPV値を約30%低減して耐摩耗性を高めている。

 開発品では、従来品に比べてフロント列(ブレードに近い側)の接触角を小さくする一方でリア列(ブレードに遠い側)では大きくした(図2)。ころの長さについてはフロント列よりリア列を長くしている。こうした構造によって、風によるアキシャル荷重をリア列で、ラジアル荷重をフロント列で効率よく受けられるという。

 風力発電装置の主軸用軸受けには、ローターやブレード(翼)などの質量が軸に対して垂直方向に作用するラジアル荷重に加えて、風荷重が軸に対して水平に作用するアキシャル荷重がかかる(図3)。そのため、フロント列に比べてリア列に大きな荷重が作用する。同用途には、負荷容量が高く、取り付け誤差に対する許容能力に優れる自動調心ころ軸受けを使うことが多いが、この軸受け特有の転がりすべりや、潤滑不足による軌道面ところの金属接触により、PV値の高い個所から起動面の摩耗が進み、特にリア列の外輪に剥離や割れが発生しやすいという課題があったという。開発品では、フロント/リア列のころで荷重を分担することでこの課題に対応した。

 その他、内輪に中つばを備え、ころの最大径位置を中心からずらした設計により、ころのスキュー(正規の自転軸に対する傾き)を抑えた。内輪の内径や外輪の外径、幅寸法については、従来品と同寸法での設計が可能。さらに、従来品と同等の寿命を持つ軸受けを設計する場合は内径を約10%、質量を約30%減らせるので、風力発電装置の小型・軽量化を図れる。風力発電装置以外でも、ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重が作用する他の用途に使える。