「NOC成長法」とその原理的メリット
「NOC成長法」とその原理的メリット
(出所:JST)
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メガソーラー市場における、NOC成長法の位置づけ
メガソーラー市場における、NOC成長法の位置づけ
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NOC成長法によるシリコンインゴット単結晶
NOC成長法によるシリコンインゴット単結晶
(出所:JST)
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ハイパーフォーマンスキャスト法とNOC法による太陽電池の変換効率分布
ハイパーフォーマンスキャスト法とNOC法による太陽電池の変換効率分布
(出所:JST)
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 科学技術振興機構(JST)は8月9日、太陽電池向け単結晶シリコンのインゴット(結晶ブロック)を低コストで量産できる技術を開発したと発表した。現在、メガソーラー(大規模太陽光発電所)向けで主流となっている多結晶シリコンを置き換え、変換効率の向上を促す可能性がある。JSTの中嶋一雄・研究チームリーダーらの成果。

 多結晶シリコンは、「キャスト法」という生産性の高い手法でインゴットを製造するため低コストの利点がある。この製法は、ルツボ内でシリコン融液が固まっていくため、ルツボ壁面などで結晶品質に劣り、バラつきが大きいため、変換効率が低くなる課題があった。

 一方、単結晶シリコンは、種結晶からゆっくりと結晶を引き上げてインゴットを成長させる「CZ(Czochralski)法」で製造するため、生産性に劣り高コストになるものの、結晶品質に優れ、変換効率が高くなる。

 かりにキャスト法による成長炉で、現行の単結晶なみの歩留まりと特性を持つ結晶シリコンのインゴットを製造できれば、低コストと高品質を両立でき、メガソーラー向け結晶シリコン市場で主流になると見込まれる。

 そこでJSTでは、キャスト成長炉を使った「NOC(Noncontact Crucible)法」という新しい手法を開発し、単結晶シリコンのインゴットを製造することに成功した。この新製法で作った単結晶シリコンは、現行のCZ法による単結晶の太陽電池特性や歩留まりと同等で、キャスト法の改良型であるハイパーフォーマンスキャスト法による多結晶シリコンを凌駕する特性を得たという。これは世界初の成果という。

 NOC法は、多結晶インゴットを得るためのキャスト成長炉に、さらに融液内に独自に低温領域を設定し、ルツボ壁に触れないで単結晶を融液内で成長できるように工夫をしたもの。使う材料を高純度化し、ガスの流し方を工夫したほか、インゴット底部を凸化するなど融液がルツボ壁と反応するのを防止した。加えて、結晶中に含まれる酸素濃度や金属不純物を低減し、さらに結晶欠陥を低減させた。

 JSTによると、NOC法によるインゴットは、キャスト成長法で作製した多結晶シリコン太陽電池と比較し、太陽電池特性と歩留まりがともに圧倒的に優位のため、次世代のインゴット製造法として有望という。今後スケールアップ技術が進展すれば、メガソーラー市場の主流になる可能性が高いという。