蓄電池システムの開発や販売を行う米Sunverge Energy社は8月5日、オーストラリアのエネルギー事業大手であるAGLおよびオーストラリア・再生可能エネルギー庁(ARENA)と提携し、世界最大となる「仮想発電所(VPP)」プロジェクトを南オーストラリア州アデレードで推進すると発表した。
仮想発電所の出力は5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)に相当し、貯蔵可能なエネルギーは7MWhとなる見込み。これは、一般家庭1000軒の電力を十分に賄える規模という。
これによって、電力需要のピーク時や、太陽光の出力変動などに対して需給バランスを適切に管理でき、出力の変動する再生可能エネルギーを増加させつつ系統運用を安定化できるとしている。
プロジェクトは約18カ月間にわたり、3つのフェーズに分けて展開される。
まず、2017年4月までとなる最初のフェーズで、アデレード都市圏の先着150世帯にSunverge社の「Solar Integration System (SIS)」(出力5kW、容量7.7kWh)を3500豪ドルの割引価格で提供する(図)。この価格には、ハードウエアとソフトウエア、工事費などが含まれる。
太陽光パネルの出力が大きく、余剰電力の多い顧客の場合、ペイバック期間が7年になるとしている。現在、太陽光パネルを所有していない消費者は、蓄電池と共に適切なサイズの太陽光発電システムを購入できるようにする。
その後のフェーズでは、アデレード都市圏内で提供する地域が狭められるが、ピーク需要の管理やその他の機能の効果が実証で示される場所を中心に進められる見込みである。プロジェクト全体の規模とSISの製品仕様から、最終的に約1000軒の世帯が今回のVPPプロジェクトに参加するものと見られる。
プロジェクトの総費用は約2000万豪ドルで、条件が満たされれば、そのうちの5000万豪ドルを「高度再生可能エネルギー・プログラム」の一環としてARENAが拠出する。
AGL社は、オーストラリア東部を中心に電力やガスを供給しており、近年は太陽光発電などの再生可能エネルギー導入や温室効果ガス排出量の削減などに取り組んでいる。
米Sunverge Energy社には、豪Southern Cross Venture Capital社、豪AGL社、豪ARENA、中国Softbank China Venture Capital社、独Siemens社、仏Total社、韓国Kokam社、三井物産など多彩な企業・団体が出資している。