インド政府は7月30日、中国およびマレーシアから輸入される太陽電池セル(発電素子)や太陽光パネルに対して2年間のセーフガード(緊急輸入制限)関税を導入した()。

表●インドが中国製およびマレーシア製の輸入太陽電池および太陽光パネルに課すセーフガード関税
(公開情報を基に日経BP総研 クリーンテックラボが作成)
適用開始日
適用終了日
セーフガード
関税率
25%
2018/7/30
2019/7/29
20%
2019/7/30
2020/1/29
15%
2020/1/30
2020/7/29

 インド政府商工省内に5月に新設された貿易救済総局(DGTR)が提出していた最終的な推奨案を基に財務省が公式に発表したもの。最初の1年間の税率が25%、その後の半年間に20%、さらに次の半年間に15%まで税率を段階的に引き下げる。

 セーフガード関税が適用となる対象国は中国とマレーシアで、現在インドに輸入される太陽光パネルや太陽電池の90%以上をこの2カ国が製造している。インドのセーフガード総局(DGS)によると、インド国内製品の市場シェアは2014~2015年に13%だったものが、2017年に7%にまで低下していたという。

 ただ、中国の太陽光パネル製造大手の多くは、欧州の課徴金や米国の追加関税への対策などからマレーシアを含むASEAN地域で製造拠点の多極化を既に進めている(関連記事1)(関連記事2)。

 このためマレーシアがセーフガード関税の適用対象になっても、中国の太陽光パネルメーカーが、タイやフィリピン、インドネシア、ベトナムといったASEAN域内の他の製造拠点からインドに輸出することは比較的容易とみられる。

 また、25%のセーフガード関税が課せられる場合でも、中国の大手太陽光パネルメーカーの製造コストはインド国内メーカーと比較して競争力が十分に高いため、インド国内の太陽光パネル製造産業保護という点でどの程度の実効性があるのか疑問視する向きもある。

 その半面、インドにおけるメガソーラー(大規模太陽光発電所)などのプロジェクトのコストは、セーフガード関税の適用によってただちに最大約15%上昇すると見られており、同国内の太陽光発電産業の業績悪化や雇用への悪影響が懸念されている。