企業が扱うデータ量の増大やIoT(Internet of Things)の発展などを受け、データセンターの重要性は高まる一方だ。その大きな課題は、増え続けるデータ処理の要求に、いかにして消費電力を抑えたまま応えていくかである。ムーアの法則による電力削減の効果が薄れる中、新たな冷却技術に対する期待は大きい。データセンターの省電力化を推進する業界団体The Green GridでBoard Memberを務める米Hewlett-Packard Enterprise社Power and Cooling ArchitectのTahir Cader氏に、データセンターの冷却技術の最新動向を聞いた。(聞き手=今井拓司)

米Hewlett-Packard Enterprise社Power and Cooling ArchitectのTahir Cader氏
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米Hewlett-Packard Enterprise社Power and Cooling ArchitectのTahir Cader氏

――「The Green Grid」の具体的な活動内容を教えて欲しい。

 例えば、データセンターの省電力性能を測る標準的な指標を作っている。データセンターのエネルギー効率の指標であるPUE(Power Usage Effectiveness、データセンター全体の消費電力とIT機器の消費電力の比で、小さいほど冷却効率が高い)や水の利用効率を測るWUE(Water Usage Effectiveness)、カーボンフットプリント(CO2排出量)の指標CUE(Carbon Usage Effectiveness)、データセンターの成熟度を測るDCMM(Deta Center Maturity Model)などだ。

――2014年末に設立した液冷ワーキンググループの活動は。

 液冷ワーキンググループには、液冷技術に関わるエコシステム全体からメンバーが参加している。液冷機器や部品のメーカーからHewlett-Packard Enterprise社や米Dell社、米IBM社などのIT機器のベンダー、Google社やMicrosoft社といったエンドユーザー企業など、多彩な企業が加わっている。

 大きな目的は、エンドユーザーの教育だ。万一漏れた場合にシステムを停止させかねないなど、液体を使うことに抵抗感を持つユーザーは少なくない。ただし、10年前と比べると技術はかなり進歩しており、最新の知識を伝えていきたい。例えば、さまざまな異なる方式の基礎を伝えていく。また、一般に液冷システムは高価とみなされており、そのTCO(Total Cost of Ownership、総保有コスト)に対して何がキーになるのかを検討するサブグループもある。