カナディアン・ソーラーのショーン・クー会長兼CEO(右)と、日本法人の山本豊社長(左)
カナディアン・ソーラーのショーン・クー会長兼CEO(右)と、日本法人の山本豊社長(左)
(撮影:日経BP)
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発電時のパネル温度を低下
発電時のパネル温度を低下
(撮影:日経BP)
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パネル内の回路構成
パネル内の回路構成
(撮影:日経BP)
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 カナダの大手太陽光パネルメーカーの日本法人、カナディアン・ソーラー・ジャパン(東京都新宿区)は7月4日、「ハーフカット」タイプのセル(発電素子)を使った高効率パネルの新製品を発表した。

 東京都内のカナダ大使館で、取引先などを招いて開催した「スペシャルパートナー イベント」において発表した。

 p型半導体のセルを使ったパネルで、変換効率を最大19.2%以上に高めたもの。カナディアン・ソーラーのショーン・クー会長兼CEO(最高経営責任者)は、「最近実用化された新しく伸び代の大きい技術ではなく、太陽光パネルの中では商業化が早く、成熟度の高いp型で実現したことに意味がある。実績のある製造プロセスで量産できることから、コスト競争力もある」と強調した。

 従来の結晶シリコン系パネルが抱えていた、三つの課題を改善したとしている。いずれも稼働中のパネルが高温になることで生じる問題点である。

 一つ目は、発電中のパネルの温度上昇を抑えることで、夏季などの高温時の変換効率の低下を抑制した。二つ目も、発電中のパネルの温度上昇を抑えることによるもので、局所的に過剰に温度が上昇する「ホットスポット」も抑制できる。

 三つ目は、パネルの裏面に固定されているジャンクションボックス内にあるバイパスダイオードの温度上昇を抑えた。

 パネルの温度上昇は、一般的なパネルで使われている正方形タイプのセルを、半分に切断してパネルに組み込むことで実現した。「ハーフセル」などと呼ばれる手法で、同社は「デュアルセル」と呼んでいる。

 半分に切断したセルを使ったパネルを、「Ku」シリーズとして製品化した。

 従来の60セルで構成するパネルに相当する製品は120セル、72セル品に相当する製品は144セルで構成する。

 セルの寸法を半分にしたうえで、直列につなぐ枚数を同数にし、パネルの長辺方向の中央で、回路を上下の半分ずつに分け、この二つの回路を並列で接続した。

 その結果、従来の電圧を維持したまま、各セルに流れる電流は半分になる。これによりセル内の損失が従来の4分の1に減り、抵抗によって生じるパネルの温度上昇も抑制される。

 発電中のパネルの温度は、従来品に比べて2~3℃下がる。これによって、結晶シリコン系パネル特有の、高温時に変換効率が下がる現象を抑え、年間の発電量を増やせる。

 また、現状の結晶シリコン系パネルでは、出力350W/枚といった高出力の製品では、発電中のパネル内のホットスポットの温度は、175℃以上に達することがある。

 今回の構造は、ホットスポットの温度を、単結晶シリコン型で約20度、単結晶シリコン型でPERC(Passivated Emitter and Rear Cell:裏面不動態型セル)を採用したパネルで約25℃下げる効果がある。

 この効果によって、従来のパネルではホットスポットとなっていた部分が、ホットスポットではなくなるほど、周囲との温度差が小さくなる場合が出てくる。