成層圏を飛行する時の予想図
成層圏を飛行する時の予想図
(出所:サンパワー)
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 太陽光パネルメーカーの米サンパワーは6月20日、太陽光発電電力で、成層圏まで到達することを目指した飛行機のプロジェクト「SolarStratos」の概要を発表した。同社が太陽光発電関連の技術を提供している。

 今後2年以内に、飛行の範囲が対流圏の上や成層圏に達する、世界初の太陽光発電による飛行機になるとしている。飛行する高度は、地上から8万フィート(約24km)以上となり、旅客機の一般的な巡航高度の2倍の高さとしている。

 サンパワーは、航空機用の太陽電池セル(発電素子)を供給する。

 サンパワーはこれまでにも、米国航空宇宙局(NASA)の開発した地上9万6863フィートで飛行する無人飛行体や、太陽光発電電力のみで世界一周を目指す航空機「ソーラー・インパルス2」でも、太陽電池セルを提供している。

 SolarStratosの社長 兼 パイロットであるRaphael Domjan(ラファエル・ドンジャン)氏は、数々の賞を受賞しているスイス出身の冒険家で、さまざまな冒険のプロジェクトを成功させた実績を持つ。2012年に立ち上げた、太陽光発電電力のみで海上を航行する船舶のプロジェクト「PlanetSolar」の創始者、リーダーでもある。このプロジェクトも、サンパワーの太陽光発電技術を採用している。

 SolarStratosでは、まず2018年9月に、試作機で地上3万3000フィートに達する飛行を試みる。この高度でも、太陽光発電による航空機として、世界初の高さとなるという。

 サンパワーによると、同社の太陽電池セルは、高効率な上、耐久性に優れ、軽くて人間の毛髪ほどの薄さであることが評価され、採用されたとしている。

 SolarStratosの次世代機では、変換効率が22〜24%の太陽電池セルを、主翼と水平尾翼に装着する予定。埋め込まれた太陽電池セルの面積は合計で22m2としている。

 この次世代機は、容量20kWh、出力32kWのリチウムイオン蓄電池を搭載している。電気自動車(EV)に比べると、出力は約3分の1となる。太陽光発電電力は、機内で使用中の電気系統に送電するとともに、余った分はこの蓄電池に貯めておき、太陽光発電電力が不足している時に放電して使う。12時間以上の飛行に耐え得るという。

 次世代機は、全長が8.5m、翼長が約24.8mを予定している。

 飛行時の電力消費に大きく影響する重量は、450kgを予定し、グランドピアノに匹敵する。軽量化の工夫として、操縦室(キャビン)内の気圧を高くせず、代わりにパイロットが加圧された宇宙服を着ることにした。宇宙服への加圧にも太陽光のエネルギーを使う。

 今後、2年以内を目標とする、成層圏の飛行を目指す機体は、2人乗りになる予定である。