イセ食品の伊勢彦信会長
イセ食品の伊勢彦信会長
(出所:日経BP)
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埼玉県鴻巣市の1.938MWの「鴻巣市広田発電所」
埼玉県鴻巣市の1.938MWの「鴻巣市広田発電所」
(出所:ISEパワー)
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富山県高岡市の2.511MWの「西田発電所」
富山県高岡市の2.511MWの「西田発電所」
(出所:ISEパワー)
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宮城県加美郡の2.404MWの「色麻第一発電所」、2.548MWの「色麻第二発電所」
宮城県加美郡の2.404MWの「色麻第一発電所」、2.548MWの「色麻第二発電所」
(出所:ISEパワー)
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 鶏卵の大手であるイセ食品(埼玉県鴻巣市)のグループは4月、石川県七尾市で出力27MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)の運転を開始した(関連ニュース)。同社グループに、太陽光発電への取り組みや今後の計画などを聞いた。

 イセグループでは、養鶏場跡などのグループの所有地や、同グループの伊勢彦信会長の所有地などを活用し、太陽光発電所を開発・運営している。再生可能エネルギー発電を手掛けるISEパワー(東京都港区)が開発や運用を担当している。

 養鶏の分野では、例えば、鶏舎の技術革新が進み、従来よりも設置面積の少ない鶏舎で、より多くの鶏卵を生産できるようになった。

 これにより生産単位当たりの養鶏場の面積が小さくなり、遊休地が増えたという。こうした土地のうち、太陽光発電に向く場所を活用している。

 また、七尾市のメガソーラーのように、養鶏場の用地として取得したものの、実際には未活用だった土地に建設した案件もある。

 イセグループでは、七尾市の案件が稼働する前に、出力約2MWのメガソーラーが10カ所、合計出力20MW分がすでに稼働していた。七尾市のメガソーラーの稼働によって、これが11カ所・合計出力47MWに拡大した。

 これまでの高圧に連系する案件では、EPC(設計・調達・施工)サービスは、日立製作所、ミライト・テクノロジーズ、富士古河E&Cに委託してきた。

 太陽光パネルはさまざまなメーカーの製品を採用している。パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)と日立製作所の製品を採用してきた。

 イセグループでは、今後も国内でメガソーラーを開発する計画をもつ。宮城県では、出力30~40MWという大規模な案件の開発を進めている。

 宮城県の案件は、32円/kWh(税抜き)の設備認定を得ていたが、より出力規模を大きくするために認定を返上したという。固定価格買取制度(FIT)の改正により、今後予定されている入札に参加し、改めて設備認定を得る予定としている。

 七尾市に稼働した27MWの案件では、規模が大きいこともあって、他社と組んで開発することにした。北陸最大のメガソーラーとなることから、世界的な企業と組みたいと考え、伊勢会長が、美術品の収集を通じて築いたフランスのネットワークを活用し、トタルと組むことになった。世界有数のエネルギー企業であることに加え、今後の本業も含めた事業的な発展性も魅力だったとしている。

 トタルは、米国の太陽光パネルメーカー、サンパワーを傘下に収めていることから、同社製の高効率パネルを採用できる利点もある。

 トタルと検討中の取り組みには、先端的な養鶏もある。イセグループでは、「スマートファクトリー」と呼んでいる。産む卵の個数を増やす、卵の寸法を大きくするといった、より効率的な鶏卵生産の手法を確立するとともに、養鶏場に太陽光などの再エネ発電を導入し、必要な電力を自前で賄うことを構想している。

 鶏は、夏季の高温・高湿な環境では、卵を産みにくくなる。そこで、夏季でも産卵の量を維持できるように自然な生育環境を維持することが重要という。こうした管理には多くの電気が必要で、それを再エネで賄うモデルを目指している。

 イセグループでは、こうした再エネ利用の「スマート養鶏」を日本で確立した後、アジアなど海外に広げたいと考えている。アジアはより高温・高湿なほか、食糧事情に課題を抱えている地域が多い。こうした地域で、安心安全でCO2を排出しない養鶏を展開していきたいという。