メディカル・データ・ビジョン(MDV)は2017年6月13日、治験事業進出に関する記者説明会を開催した。これは、同年5月23日の取締役会において、SMO(治験施設支援機関)事業を行うコスメックスを完全子会社化することを決議したことを受けたもの。説明会にはメディカル・データ・ビジョン 代表取締役社長の岩崎博之氏とコスメックス 代表取締役社長の林一郎氏が登壇し、今後の事業展開について語った。

メディカル・データ・ビジョン 代表取締役社長の岩崎博之氏
メディカル・データ・ビジョン 代表取締役社長の岩崎博之氏
[画像のクリックで拡大表示]
 メディカル・データ・ビジョンは、2017年をビッグデータを活用してその有効利用を始める年と位置付ける。岩崎氏は、「その柱となるのが治験だ」と述べた。同社が持つ医療ビッグデータを活用して「迅速かつ安価で、正確、安全性を担保した治験を実現したい」と同氏は展望する。

 これまでの治験のプロセスは、次の5つの工程を順に踏むことで行われていた。すなわち、(1)プロトコルを作成、(2)施設や患者のリクルーティング、(3)被検者からの許諾取得、(4)治験実施・報告書作成、(5)報告書整合性確認だ。しかし、施設や患者のリクルーティングを行う際に対象を事前抽出することができなかったため、(1)と(2)のプロセスを繰り返し行う必要が生じて治験の実施が滞ることがあったという。

コスメックス 代表取締役社長の林一郎氏
コスメックス 代表取締役社長の林一郎氏
[画像のクリックで拡大表示]
 さらに臨床試験が世界で同時に行われている昨今の事情を踏まえて国外にも目を向けると、日本の治験は価格が高く非効率だと言われている。主な原因は2つあるとコスメックスの林氏は見る。一つは、1施設当たりが抱える特定の疾患の患者数が少ないことだ。症例数を確保するために多施設で治験を実施しなくてはいけなくなってしまいコストがかかる。

 もう一つは、症例エントリーの問題。症例に応じたエントリー数を確保できない場合があるという。日本が抱えるこういった課題は、「どこの病院でも高度な治療が受けられるので、患者が特定の病院に集積することなく分散してしまっていることで起きている」と林氏は話す。

 そこで、メディカル・データ・ビジョンの各施設が抱える症例数や疾患別のデータを利用して、症例集積度が高い施設や少ない症例数でもエントリーが可能な症例の検索を行う考えだ。具体的には、これまでの治験のプロセスの(1)と(2)の間にPRO(Patients Researched Organization)と呼ぶ、医療ビッグデータを活用して対象者を事前に抽出する工程を追加する。

 PROの工程によって「迅速で効率的な治験が可能になる」と岩崎氏は期待する。さらに、マンパワーに頼らずにデータを使ったリクルーティングを可能にするため、人件費の大幅削減も可能になると読んでいる。