「SSDを使うとなぜ音が違うのか、私も不思議だった。デジタルデータを使っているのでSSDとHDDで変わるはずがないと普通は考える。だが、(会場内の)試聴コーナーで体験した方は、おそらく違っていると感じられたのではないか」――。アイ・オー・データ機器事業戦略本部企画開発部企画2課企画担当の北村泰紀氏は2017年6月8日、東京都内で開催された日本サムスン主催イベント「2017 Samsung SSD Forum, Japan」に登壇し、アイ・オー・データ機器が開発したネットワークオーディオサーバー「fidata」のSSDによる音質向上の理由を解説した。

 fidataはネットで配信されるハイレゾ音源を受信して管理するオーディオサーバー。LANケーブル経由でネットワークオーディオプレーヤーに接続したり、USBケーブル経由でUSB-DAC(デジタルアナログコンバーター)に接続したりして使用する。こういったハイレゾ音源の管理には従来、パソコンやNAS(Network Attached Storage)が使われることが多かった。だがユーザーから「パソコン経由の音には満足できない」「通常のオーディオ機器に比べると使い勝手が悪い」という声があったため、アイ・オー・データ機器は2012年にオーディオ専用のネットワークストレージの開発に着手。2015年にfidataというブランド名で発売した。SSD搭載モデルとHDD搭載モデルがあり、後者のHDD搭載モデルは容量を重視する顧客向けとなる。

 SSD搭載モデルの音が良くなる理由について、北村氏たちは「LANケーブルやUSBケーブルを経由してfidataからネットワークオーディオプレイヤーやUSB-DACに伝わるノイズが影響しているのではないか」と推定した。そこで、裏付けを取るためにSSD搭載モデルとHDD搭載モデルのグラウンドラインのノイズ、さらにそれらにつながったUSB-DACのノイズを測定した。「面白かったのは、fidata側のノイズ変動の傾向がそのままUSB-DACに伝わっていたことだ。HDDはモーターを回転させるので、どうしても電圧変動が避けられない。ざっくりいうと、HDD搭載モデルのノイズはSSDの2倍程度あった」(北村氏)。

会場ロビーに展示されていたSSD搭載モデル「HFS1-S10」(左)とHDD搭載モデル「HFS1-H40」
会場ロビーに展示されていたSSD搭載モデル「HFS1-S10」(左)とHDD搭載モデル「HFS1-H40」
希望者は両者を聴き比べすることができた。HFS1-S10はSamsung Electronics社のSSD「850EVO」を2台搭載しており、RAID0でデータを分散配置する。このほか合計4台のSSDをクラスタリング構成にした上位モデル「HFS1-XS20」(実効容量2TB、64万8000円)もある
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