産業技術総合研究所(AIST)の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)は5月29日、福島県郡山市で2018年度・研究報告会を開催した。

 FREAは、福島県が掲げる再生可能エネルギーによる地域の自立と産業活性化などの復興計画を支援するため、2014年4月にAISTが設立した。報告会は2015年春から毎年、開かれている。

 今回の報告会では、経済産業省の山崎琢矢・新エネルギー課長による基調講演などの後、再エネ分野ごとの研究テーマに関し、最新の研究成果が発表された。

 太陽光分野では、「再生可能エネルギーネットワーク開発・実証」と題して、太陽光発電向けの次世代型パワーコンディショナー(PCS)の動向のほか、「結晶シリコン太陽電池の高効率化・高信頼性技術」などの発表があった。

 また、今回の報告会では、再エネ由来の水素やアンモニアの製造、運搬、利用など、変動電源である太陽光・風力発電の余剰電力を活用した蓄電システムの実証事業の紹介・解説に多くの時間を割いた。

 基調講演では、経産省の山崎課長が、新しい「エネルギー基本計画」に「再エネを主力電源に」との文言が入ることの意義を強調した。「従来、再エネの位置づけは、『課題を解決して最大限導入』との言い方だったが、今後は、『主力電源にしていくための課題を洗い出し、克服していく』ことになる。この違いは大きい」とし、現時点の大きな課題として、低コスト化、長期安定電源化、系統制約の解消などを挙げた(図)。

経済産業省の山崎琢矢・新エネルギー課長による基調講演
経済産業省の山崎琢矢・新エネルギー課長による基調講演
(出所:日経BP)
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 太陽光の次世代型PCSの動向に関しては、FREA・エネルギーネットワークチームの大谷謙仁チーム長が講演し、「スマートインバータ」と呼ばれる次世代PCSの方向性や普及に向けた取り組み状況を解説した。

 FREAでは、2016年4月に「スマートシステム研究棟」を建設し、3MW級・直流1500V対応機(東芝三菱電機産業システム・TMEIC製2.7MW機)を導入して、系統連系試験を実施するなど、大型PCSの長期信頼性試験の手法を確立してきた。同研究棟では、国内最大の電波暗室を備えるなど、海外のPCS規格の認証試験も行える体制が整っており、2017年度には国内6メーカーのPCSについて外国の認証試験を行ったという。

 大谷チーム長は「太陽光向けPCSは、低コスト化のために大型化してきたが、次の流れは、通信機能と高度な制御機能を備えたスマート化になる。再エネ大量導入のなかで電力系統の安定運用を実現するため、スマートインバータは必須になる」と言う。