災害による損失は180億ドル、年間約100件のサイバー攻撃

 従来、電力網に対する主な脅威は、竜巻、台風、吹雪といった自然災害によってもたらされてきた。それらによる停電や米国内のインフラに対する損害は毎年、180億~330億ドルに上る。

 さらに、2013年にシリコンバレーで発生した変電所への銃による攻撃や、ウクライナで2016年に発生したコンピューターへのハッキング攻撃による停電など、電力網への攻撃は物理的なものとサイバー系のものの両方が起こり得る。シリコンバレーの銃撃は、影響が27日間続き、1億ドルもの損害となったという。

 米国防総省によると、2012年に約200件のサイバー攻撃が米国の重要なインフラに対して行われ、そのうちの半分近くが電力網を標的としたものだった。

 「太陽光マイクログリッド」を構築すれば、インフラの柔軟性を高め、電力網からの給電がストップした場合でも電力の供給が継続し、重要なインフラが機能を維持できる。「太陽光発電システムのコストは下落しており、地理的にも長期間にわたって太陽光という『燃料』を入手できる。太陽光発電がマイクログリッドの電源として最適」(Pearce助教授)としている(図3)。

図3●米国内で日照条件の良い地域でも、太陽光を未導入の米軍基地が多い
図3●米国内で日照条件の良い地域でも、太陽光を未導入の米軍基地が多い
(出所:MTU)
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 さらに、同論文の主筆を務めるEmily Prehoda氏は、「基地がエネルギー面で独立性を高めることが、地域経済を支えることになる。先端的な技術や政策が重要な社会インフラやサービスとして社会に浸透する過程で、軍はその架け橋として重要だ」と述べている。