英国の系統運用機関であるナショナルグリッドは5月8日、同国の電源構成において石炭火力発電の比率がゼロとなる連続期間がこれまでで最長の1週間(168時間)を超えたと発表した(図1)。

図1●英で約8日間続いた石炭火力ゼロの系統運用における電源構成の推移
図1●英で約8日間続いた石炭火力ゼロの系統運用における電源構成の推移
(出所:National Grid)
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 英国では約2年前の2017年4月に「石炭火力ゼロ」の日を初めて記録(関連記事1)、これまでの最長期間は、2019年のイースター(復活祭)の週末(4月21日)に記録した90時間45分だった。

 同社は翌5月9日、石炭火力ゼロの連続期間が8日1時間(193時間)25分まで継続し、1882年に世界初の石炭火力発電所がロンドンで稼働して以来、最長となったと発表した。

 同社によると、他の発電所で故障が発生したため、電力の安定供給を継続するために石炭火力発電を再開したことでさらなる記録の更新はならなかったという。

 石炭火力がゼロとなっている期間の電源構成は、天然ガス火力45%、原子力21%、風力12%などとなっており、太陽光は5%だった(図2)(関連記事2)。

図2●英で約8日間続いた石炭火力ゼロの系統運用時の電源構成。その他には水力や蓄電池が含まれる
図2●英で約8日間続いた石炭火力ゼロの系統運用時の電源構成。その他には水力や蓄電池が含まれる
(出所:National Grid)

 同社の送電部門で責任者を務めるFintan Slye氏は、「今後、電力系統に連系される再生可能エネルギー由来の電源がますます増加するにつれて、今回のような石炭火力ゼロの電力網運用が日常的なものとなるだろう。2025年までに英国の電力系統を温室効果ガス排出量がゼロの電源100%で運用することが可能になると考えている」と述べている。

 英国政府は、温室効果ガス排出量を抑制するため2025年までに石炭火力を全廃することを公約しており、取り組みを進めている。