動脈スティフネスの比較グラフ
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血管年齢と実年齢との差の比較グラフ
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呼吸機能の比較グラフ
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 海女の血管年齢は同年代の日本人一般女性よりも11歳程度若い――。こんな研究結果が明らかになった。これは、産業技術総合研究所(産総研) 人間情報研究部門 身体適応支援工学研究グループ 研究グループ長の井野秀一氏と主任研究員の菅原順氏が、テキサス大学 オースティン校 教授の田中弘文氏やフクダ電子などと、三重県志摩・鳥羽地区ならびに千葉県南房総市白浜に在住する海女121人を含む女性203人(平均年齢65歳)の血管年齢計測を実施したもの。

 今回の研究では、調査した女性を「現役海女」「有酸素性運動を習慣的に行っている女性」「運動習慣を有さない女性」の3群に分類。心血管疾患の発症リスクとして注目されている動脈壁の硬さを示す動脈スティフネスを計測した。具体的には、動脈スティフネスの指数で血管の硬さを示す「Cardio-ankle vascular index(CAVI)」(数値が低いほど血管がしなやか)で評価した。

 得られたCAVI値は、運動習慣を有さない群と比較して、有酸素性運動を習慣的に行っている群で5.8%、海女で7.4%ほど低い値を示した。さらに、血管年齢と実年齢の差を比較すると、運動習慣を有さない女性は平均で約6歳、有酸素性運動を習慣的に行っている女性は平均で約8歳、現役海女は平均で約11歳、実年齢よりも若い結果になったという。

 一方で、海女の肺活量は運動習慣のない一般女性より高いものの、1秒間でより多く空気を吐き出す能力「1秒率」は低いという結果が得られた。一般的に、有酸素性運動は呼吸機能と1秒率の向上が明らかとなっていることから、産総研などのグループは、高強度の有酸素運動を行わずとも動脈の機能を維持・向上できる可能性があることが示唆されたと見ている。

 産総研では今後、水中運動に伴う身体機能の適応メカニズムの詳細を解明していく予定。これにより、新しいスタイルのリハビリテーション法の提案や、新たな心血管疾患発症予防策の創出を目指す。