津波に被災した約100haを活用
津波に被災した約100haを活用
(出所:住友商事)
[画像のクリックで拡大表示]
竣工式の様子
竣工式の様子
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
パネルは東芝製、パワーコンディショナーは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用
パネルは東芝製、パワーコンディショナーは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 住友商事は4月13日、福島県南相馬市で、出力約60MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「南相馬真野右田海老太陽光発電所」の竣工式を開催した。

 福島県相馬市に昨年稼働したで出力52.5MWのメガソーラー「レナトス相馬ソーラーパーク」を上回り、福島県内で最大規模の太陽光発電所となる。

 東日本大震災によって津波に被災した海岸地域の農地や居住地域など約100haを活用した。防災集団移転促進事業と土地改良事業法に基づき、南相馬市が使用収益権を取得した真野・右田・海老地区に建設した。

 太陽光パネルの設置容量59.9MW、連系出力は45.5MWとなる。総事業費は約220億円。年間64GWhの発電量を見込み、これは一般家庭約2万世帯分に相当する。固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価は40円/kWhとなる。

 事業主体は、SPC(特定目的会社)のソーラーパワー南相馬・鹿島で、同社には住友商事が80%、住友商事東北が20%を出資した。みずほ銀行をアレンジャーとしたプロジェクトファイナンスを組成し、SPCに対して融資した。2016年5月6日に着工し、2018年3月20日に商業運転を開始した。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、東芝エネルギーシステムズと大成建設が担当した。太陽光パネルは東芝製(22万1496枚)、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(750kW機・60台、500kW機・1台)を採用した。

 南相馬市は、2012年10月に「南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン」を策定し、2030年に市内の消費電力量に対する再生可能エネルギーの導入比率を100%にする目標を掲げている。

 竣工式で挨拶した南相馬市の門馬和夫市長は、「津波被害が甚大だった地区が、FITを活用することで復興に動き出せた。再エネ100%を達成する道筋が明らかになり、さらなる再エネ導入に弾みがつく」と述べた。

 住友商事・国内再生可能エネルギー事業チーム長で、ソーラーパワー南相馬・鹿島の代表を務める平野貴之氏は、「ファイナンスや用地集約、軟弱地盤など、事業化までにはいつものハードルがあったが、関係者の方々の尽力によって完成に至った」と述べた。

 事業用地は、津波のリスクが高く、当初、損害保険の対象にならずプロジェクトファイナンスの組成が難しいことや、元は水田のため地盤が軟弱などの課題があった。パネルの設置高を1m以上確保することや、大成建設の開発した簡易斜杭基礎工法を採用することなどでこうした課題を克服したという。

 住友商事は、世界各地で再エネ発電の開発・運営を進めており、持分発電容量は1GW(1000MW)に達するという。今後も、再エネ開発に取り組み、南相馬市では、今回稼働した真野・右田・海老地区のサイトのほか、原町東地区で出力32.3MWのメガソーラーを建設中で、2018年12月の商業運転開始を目指している。