米食品医薬品局(FDA)は、2017年4月12日、オランダPhilips Medical Systems Nederland社に対して、Philips IntelliSite Pathology Solution(PIPS)の市販を許可した。PIPSは、生検標本を載せたスライドガラスの画像をデジタル化するシステムで、病理医が、デジタル病理画像を臨床診断に用いることが可能になる。

 米国でwhole slide imagingシステム(WSI:スライドガラスに載せられた標本全体またはその一部を高精度にデジタル画像化したもので、ディスプレイ上で観察する。デジタル化されたデータの保存、検索、転送などが容易)が、臨床診断向けに承認されたのはこれが初めてだ。WSIは、病理画像の保管と検索を効率よく行うことができ、重要な医療情報を病理学者や医療従事者、患者が利用できる。

 病理学の世界では長らく、生検組織をスライドガラスに載せて染色し、顕微鏡観察する方法が用いられてきた。PIPSは、スライドガラス上の標本を、倍率400倍に相当する解像度でスキャンしデジタル化するためのハードウエアとソフトウエアを提供する。

 FDAはPIPSに対し、de novo市販前審査(既に市販されている同等の製品は無いが、リスクは低-中度の機器が対象)を適用した。並行してFDAは、この種の検査に必要となる特別規制(special control)を作成している。特別規制は、この技術の安全性と有効性を合理的に保証するために必須で、そこには、FDAが検査に期待する精度、信頼性、臨床的意義が明示される。

 承認に当たってFDAは、約2000例から採取された全身の複数の部位に由来する標本を対象にした臨床試験1件のデータを評価した。試験の結果は、PIPSイメージに基づく臨床的な診断の精度は、通常のスライドガラスを光学顕微鏡で観察する方法による病理診断と同等であることを示した。

 PIPSは、EUとカナダでCEマークを得ており、診断に用いられている。米国でも、研究目的で、乳癌のHER2発現の評価に用いることは認められていた。