京都大学 高等研究院 iCeMS(物質-細胞統合システム拠点)とフランスIRCELYONらの共同研究グループは、金属イオンと有機物からなる結晶中で、イオンの流れを光でスイッチングできる新たな固形材料の合成に成功した(ニュースリリース)。この研究成果は、科学技術振興機構(JST)の戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)の一環である。

 発表によると、固体中で、(1)どれだけ高速にイオンを流すか、(2)どのようにイオンの動きに方向性を持たせるか、(3)どのようにイオンを動かして止めるか、というイオンを扱う研究では、電子を扱う分野に比べてデバイスなどへの応用が進展しておらず、新しい材料の創出や機構の解明が必須である。(3)に関連する人為的に刺激を与えることでイオンの流れを作ったり止めたりする材料は、その可逆性や応答性を利用したメモリーやセンシング素子としての活用が期待されるものの、刺激を与えたときに固体全体に渡ってイオンの流れを変えられる構造体の設計と合成が難しく、新しい物質を求められていたという。

 今回の研究では、イオン伝導性材料である「配位高分子」を用いて、スイッチング特性をもつイオン伝導体の合成を検討した。光に応答するイオン伝導性を固体中に持たせるには、固体全体においてイオンが伝導できる特性と、光に応答して伝導の流れを変えられる分子の両方が存在する必要がある。そこで、研究グループは配位高分子の中から、亜鉛イオン(Zn2+)とリン酸(H3PO4)、イミダゾール(C3H4N2)が結晶中でネットワークを組む結晶を用いた。

亜鉛イオン、リン酸、イミダゾールから成る配位高分子結晶の構造と、光応答性のピラニン分子
亜鉛イオン、リン酸、イミダゾールから成る配位高分子結晶の構造と、光応答性のピラニン分子
(図:JST)
[画像のクリックで拡大表示]