キーサイト・テクノロジーは、これまで一般的な計測器では観測が難しかった、微小なダイナミック電流の波形を表示できる新たな計測器「CX3300シリーズ デバイス電流波形アナライザ」(図1)を開発し、2016年4月5日から販売を始めた(ニュース・リリース)。日本のキーサイトで開発した製品で、米Keysight Technologies社が世界市場で販売する。出荷開始は同年6月中旬の予定。

図1●今回の新製品(右側) 左側の任意波形発生器でBluetooth Low Energyの疑似信号を出力して、新製品で計測している。新製品の画面左側は測定した電流波形。右側はそのスペクトラム解析結果。日経エレクトロニクスが撮影。
図1●今回の新製品(右側) 左側の任意波形発生器でBluetooth Low Energyの疑似信号を出力して、新製品で計測している。新製品の画面左側は測定した電流波形。右側はそのスペクトラム解析結果。日経エレクトロニクスが撮影。
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図2●一般的なオシロスコープでは微小電流を測れない キーサイトのスライド。
図2●一般的なオシロスコープでは微小電流を測れない キーサイトのスライド。
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図3●新製品の構成 キーサイトのスライド。
図3●新製品の構成 キーサイトのスライド。
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 開発に携わったキーサイトの里方昭彦氏(半導体パラメトリックテスト事業部 マーケティング部 半導体計測ビジネス シニア・プロダクト・プランナ)によれば、オシロスコープをはじめ電流測定機能を持つ計測器は多いが、市場にあるほとんどの計測器は基本的に電圧を測定しており、微小な電流の計測は苦手だという。「待機時の電流など、微小な電流の波形を見たいと思っても、ノイズが乗ってしまって、正確な電流プロファイルはとても求められなかった」(同氏)という(図2)。

 これに対して、新製品は、最小150pAの電流の波形を計測・表示できる。測定帯域は最大200MHz。サンプリングレートは最大1Gサンプル/秒。ダイナミックレンジは14ビットまたは16ビットである。マルチタッチ操作が可能なWXGA解像度の14.1インチディスプレーを備えている(図3)。

 「内部の測定用ハードウエアは一から開発しておりオシロスコープとは全く異なるが、外観や操作性はオシロスコープに近くてエンジニアがすぐに使える」(同氏)という。本体価格は440万~900万円のレンジ(チャネル数や波形メモリー容量で変わる)で、手が届かない範囲ではない。

 新製品の主なターゲット市場は2つ。1つはIoTのエッジノードなど、電池動作で低電力が必須のモジュールやパッケージデバイス。「これまでは、オシロスコープで平均電流値を見ることが多かった。新製品では波形をそのまま見られる」(里方氏)。もう1つのターゲットはReRAMやPRAM、STT-MRAMなど次世代の半導体デバイス。「新製品をウエハープローバーと接続することで、100ns以下の細い電圧パルス印加後の電流波形をそのまま見ることができる」(同氏)。