富士フイルムは、銀塩増幅技術を応用したイムノクロマト法による結核の高感度・迅速診断キットに関し、スイスの非営利組織FIND(Foundation for Innovative New Diagnostics)と共同開発契約を締結した。今回の共同開発では、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)から2億1,600万円の助成を受け、簡便、迅速、安価で、高い診断能を有する開発途上国向けの結核迅速診断キットを開発する。期間は、2016年4月~2017年10月の1年7カ月の予定。

 結核は、全世界で年間960万人が罹患し、150万人が死亡する世界3大感染症の1つ。HIVとの重複感染も問題視されており、定期的な結核診断と早めの投薬治療が重要だ。開発途上国における結核診断は、患者の喀痰(かくたん)内の結核菌の有無を顕微鏡で観察する方法が広く用いられている。

 しかし、この方法は「肺以外の部位で発症する『肺外結核』を高い精度で診断できない」「小児や老人の患者は喀痰を簡単に採取できない」などの課題から、これに変わる検体の活用が望まれていた。また、開発途上国では「電源の確保が難しい」といった問題もあり、電源に依存しない結核の診断方法の開発も求められていた。

 今回、富士フイルムとFINDが着目したのは、尿に排出される結核菌特有の成分「LAM(リポアラビノマンナン)」。FINDが提供する抗LAM抗体と、富士フイルムの銀塩増幅技術を応用したウイルス高感度検出技術を組み合せることで、電源が必要な機器を使わず、カートリッジに検体を滴下するだけで、簡単に結核菌の有無を判定できるという。主に結核が重症化しやすいHIV感染者を対象とした結核の1次診断ツールとして、開発途上国に最適なキットの開発・実用化を目指す。