田辺三菱製薬と日立の臨床試験領域における協創の概念図
田辺三菱製薬と日立の臨床試験領域における協創の概念図
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 田辺三菱製薬と日立製作所は2018年3月26日、新薬開発における臨床試験の効率化に向けた協創を開始したと発表した。臨床試験全般の幅広い業務において日立の人工知能(AI)などを用いて臨床試験を効率化し、新薬開発の期間短縮と開発コスト削減、成功確率の向上を目指す。

 国内の新薬メーカーの事業環境は、薬価の引き下げやジェネリック医薬品の大幅なシェア拡大により、さらに厳しくなると予想されている。継続的な事業の成長に向けて、有効な治療方法のない疾患に対する医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)に応える新薬を早期に開発するためのプロセスの見直しが求められている。特に、新薬の有効性や安全性を検証する臨床試験は、新薬開発の成否を左右する重要なプロセスだが、精緻な実施計画の立案が求められるため、多大な時間と熟練者の知識・経験を元にしたノウハウを必要としてきた。

 両社はこの臨床試験の計画段階において、医学論文やClinicalrials.gov(米国で現在行われている治験および臨床研究に関する情報を提供するデータベース)などからの専門的な医学情報の検索・収集に多くの時間を要していることに着目。2017年初から共同で、情報検索・収集の自動化を検討してきた。

 日立の研究開発グループが開発した医療向けの自然言語処理やディープラーニングなどのAI技術を活用することにより、熟練者のノウハウに依存していた従来の作業と比較して、情報収集の時間を約70%短縮できることを確認。同時に収集・整理されたデータの正確性も検証し、十分に活用できる見通しを得たという。

 両社による協創の開始は、こうした検討成果を背景に臨床試験全般の幅広い業務の効率化に向けたものである。両社はそれぞれの技術・ノウハウを生かし、AIをはじめとした先進技術を用いて、臨床試験の効率化に向けて共同で取り組んでいくという。また、将来的には協創範囲を拡大し、さまざまな実証実験を行う予定である。

 なお、日立は今後、協創を通じて開発したソリューションをベースに、第1段階としてIoTプラットフォーム「Lumada」を活用し、医学文献などからの情報収集を自動化する技術を、汎用化したソリューションコアとして2018年度から順次、国内外の製薬業向けに広く提供していくとしている。