米1366 Technologies社は3月8日、同社の開発した「Direct Wafer(ダイレクトウエハー)」技術で製造した太陽電池セル(発電素子)の変換効率が19.9%に達したと発表した。同社と技術提携している韓国Hanwha Q Cells(ハンファQセルズ)社が、太陽電池セルを製造した。

 この結果に対しては、第三者機関である独Fraunhofer ISE Callabが独自に確認したという。

 1366 Technologies社は2008年創業のベンチャー企業。同社が開発したダイレクトウエハー技術では、溶融シリコンから多結晶のシリコンウエハーを一枚ずつ直接形成し、太陽電池セルを製造する。

 太陽電池産業で現在、一般的な製造工程では、まず多結晶シリコンのインゴットを製造し、そのインゴットからシリコンウエハーを一枚ずつ切り出すことで太陽電池セルを作る。

 1366社は、従来の製造工程はエネルギー消費が多く、設備投資が巨額になると主張しており、ダイレクトウエハー技術ではより高品質で高効率な太陽電池セルを従来の半分のコストで製造できるとしている。

 1366社のFrank van Mierlo最高経営責任者(CEO)は、「ダイレクトウエハー技術の変換効率は、太陽電池産業の一般的な変換効率の改善速度のほぼ倍のペースで向上している。昨年の終わりには、高効率の多結晶シリコンで基準となっている変換効率を超えた。今回、記録を更新したことで、今後もダイレクトウエハー技術によって変換効率を速いペースで改善できることを示せた」と述べている。

 1366社はダイレクトウエハー技術で効率を向上できる要因として、シリコン結晶がより高純度で成長すること、ウエハーの品質や変換効率に大きな影響を与える転移クラスターの発生を抑制可能なこと、ウエハーの表面と裏面の間のドーパント濃度を変更できるなこと(ドーピング勾配)を挙げている。

 また、ダイレクトウエハー技術による太陽光パネルを産業用太陽光に世界で初めて採用した発電所の建設が、兵庫県で始まったという。

 IHIの系列子会社であるIHIプラント建設(IPC)社による500kWの太陽光発電所で、ダイレクトウエハー技術によって製造されたウエハー12万枚以上を使用する。業界でトップクラスの中国メーカーがそれらの太陽光パネルを製造したという。

 太陽光パネルは3月3日にIPC社に納品されており、発電所の稼働は2017年の第2四半期を見込んでいる。