Bosch社のホンブルク工場における取り組みの様子
Bosch社のホンブルク工場における取り組みの様子
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 ドイツBosch社などは、「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」と「Industrial Internet Consortium(IIC)」の間で、それぞれの参照規格を連携させるプロジェクトを発足させた。このプロジェクトによって、両者にまたがるシステム統合やデータ交換が円滑になり、産業界のIoT導入を推進できるという。

 インダストリー4.0は、ドイツの産官学が進めている高度技術戦略イニシアチブ。IICは、米General Electric社などによって設立されたIoTの活用や標準化を推進する団体である。Bosch社は両方の活動に参加している。

 インダストリー4.0には「RAMI4.0(Reference Architecture Model Industrie 4.0)」、IICには「IIRA(Industrial Internet Reference Architecture)」というリファレンスモデルがあり、このリファレンスモデルで参照する規格が新たに発足させたプロジェクトにおける連携の対象になる。リファレンスモデルとは、IoTシステムを実装するに当たり、ビジネス/機能/通信などさまざまなレイヤーごとに規格との関係性を明確化したものである。

 もしRAMI4.0とIIRAで参照する規格が異なる、あるいは相互運用性が十分に確保されていない場合、両モデルに準拠したシステムを接続したり、両システム間でデータを交換したりするのが難しく、IoT導入の妨げとなる。そこで新プロジェクトでは、両モデル間の参照規格の連携を高めることで、それぞれに基づくシステムの普及を図るという。

 既にBosch社のホンブルク工場でRAMI4.0とIIRAを併用したシステムの導入を進め、「インダストリー4.0およびIICモデルの連携が可能であることを実証した」(同社)という。この取り組みには、同社の他に、フランスDassault Systemes社、ドイツSAP社、インドTata Consultancy Services(TCS)社が参加している。このシステムでは、複数のソフトウエアを組み合わせることで、油圧バルブの生産を最適化するとともに、特にピーク需要時間帯の電力消費を抑制する。ピーク時の負荷を従来比で最大10%削減することによって、製造コストを抑制し、競争力を高めている。

 そのために、Bosch社は工場内の全機械のデータを継続的に収集し、油圧バルブ製造工程における消費電力情報を生成するシステムを構築。Dassault Systemes社は機械の機能を示す多次元モデルを作成した。これらを組み合わせることで、製造工程と電力消費を可視化するシステム「デジタルツイン(Digital Twin)」が生まれた。さらに、SAP社は収集したデータをリアルタイムで解析するアプリケーション、TCS社はこれらのシステムを統合して運用するためのノウハウを提供した。システム全体におけるエネルギー管理の基本的な考え方はIIRAに基づいているが、その一部を構成するエネルギー管理システムはRAMI4.0に基づいて生産設備と接続されている。そのインターフェースに関わる規格には互換性を持たせているため、生産ラインとエネルギー管理システムの間で円滑にデータ交換できるという。