システム構成のイメージ 
システム構成のイメージ 
(出所:宮古島市)
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需要シフトで系統負荷率を向上する
需要シフトで系統負荷率を向上する
 (出所:宮古島市)
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太陽光発電の出力に合わせて需要を増やす
太陽光発電の出力に合わせて需要を増やす
 (出所:宮古島市)
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 宮古島市は2 月 26 日、宮古島市全島エネルギー管理システム実証事業(以下、全島EMS実証事業)のビジネス化の推進に向け、すまエコ(沖縄県宮古島市)と合意し、基本協定を締結したと発表した。

 同市では、2013年10月から、東芝などと協力して「全島EMS実証事業」を実施してきた。約200軒の住宅と25の事業所のエネルギー使用状況を可視化(見える化)し、省エネサービスの可能性を探るとともに、太陽光・風力発電の供給量に沿った電力需要の制御などに取り組んできた。

 今後は、同実証事業の成果を生かしつつ、宮古島市と市内の民間企業であるすまエコが協力して、エネルギー管理システム(EMS)を運用する。すまエコは、市内の電力需給システムや EMS などエネルギーの効率的な利用に関する知見を持つ。そこで同社が主体的に参画してシステム運用や事業計画について検討・検証し、将来の事業化を目指すことになった。

 具体的には、住宅のヒートポンプ給湯機や電気自動車(EV)用充電器、農業用地下水くみ上げポンプなどの需要設備に対し、「ADR(自動デマンドレスポンス)」によって稼働時間のシフトを促す。ADRとは、EMS事業者(すまエコ)からの指令を受けた需要家側EMSが判断し、手作業なしに電気設備の運用を制御する仕組みだ。

 こうした仕組みにより、宮古島全体の需要を平準化し、電力系統の負荷率が高まれば、島内に電力を供給するディーゼル発電機の運用効率が上がる。島内系統を運用する沖縄電力にとっても利点がある。

 EMSの新ビジネスモデルとしては、従来のESCO(省エネ支援サービス)型事業のように需要家からサービス料をもらう事業モデルのほか、電力系統運用者(沖縄電力)から、ADRによる需要平準化メリットの対価を受け取ることも考えられる。

 全島EMSによる新ビジネスモデルを確立できた場合、その先には、再生可能エネルギーの導入量拡大への貢献も視野に入る。変動の大きい太陽光と風力発電の出力増に対応し、需要設備の稼働を制御すれば、春や秋の昼間軽負荷期にも、太陽光の出力抑制を回避でき、再エネの接続可能量を増やせる可能性がある。

 経済産業省の主導によるスマートコミュニティ実証が行われ、地域エネルギー管理システム(CEMS)の運用に取り組んだ自治体は多い。だが、社会実験や技術実証でとどまっているケースがほとんどで、CEMSをいかに実際のビジネスに応用するかが、共通課題になっている。全島EMSの事業化を目指す宮古島での試みが注目される。