チャレナジーとスカパーJSAT実証実験の実験局
チャレナジーとスカパーJSAT実証実験の実験局
(出所:チャレナジー、スカパーJSAT)
[画像のクリックで拡大表示]

 小型風力ベンチャーのチャレナジー(東京都墨田区)は、第三者割当増資による資金調達を1月31日に実施した。引受先は、既存株主であるリアルテックファンドと、三井住友海上キャピタルおよびTHKの新規株主となる。

 資金調達の総額は約2.8億円。今回の資金調達により同社は、2020年に販売開始予定の量産機と同規模となる定格出力10kWの試験機を試作し、8月から沖縄県内で量産開発の最終段階となる実証試験を開始する。さらに、協力関係にある事業会社などと協力して量産機の普及拡大に向けた技術開発および用途開発などを推進する予定。

 チャレナジーは、「垂直軸型マグナス式風力発電機」の開発を進めている。スカパーJSAT(東京都港区)と連携し、電力や通信のインフラが脆弱な国や地域を主な対象として、風力発電と衛星通信を合わせたサービスを2019年度中に事業化することを目指している。第1弾として、1月10日から沖縄県で共同実証実験を開始した

 垂直軸型マグナス式風力発電機は、プロペラの代わりに回転する円柱が風を受けた時に発生する「マグナス力」を用いて風車を回す垂直軸型の風力発電機。円柱の回転数を制御することで風車の暴走を抑制できるため、台風などの強風時・乱流化でも安定的に発電できるという。また、プロペラ風車のように高速回転しないため、騒音やバードストライクといった環境影響も軽減できる。プロペラ風車では事故・故障のリスクがあるため設置に適さなかった離島・山間部にも設置できるという。

 衛星通信は離島・山間部のデジタルデバイド地域への高度な通信サービスの提供や、大規模災害後の災害復興通信を強みとする一方、地上の通信機器を稼働させる電源の確保が必要だった。両社の協力活動によって、マグナス風力発電機で離島地域や山間部でも地上の通信機器を安定稼働でき、電力供給の途絶が懸念される災害時でも継続的に通信環境を維持できるようになるとしている。

 実証実験では、定格出力1kW程度の試験機で発電した電力で地上通信機器を稼働させ、通信衛星環境を維持する。また、衛星通信により試験機の稼働状況を把握できるシステムの運用、試験機と衛星通信を用いた自律的なWiFiインターネット通信の維持について実験する。衛星通信の通信速度は最大上り400kbps、下り4Mbps。必要電力は最大約45W。実験期間は1月10日~3月31日の予定。

 マグナス風力発電機の実用化について、これまでも同社は風車構造部材の開発で琉球大学とも連携している。2017年10月6日に共同研究について発表した。マグナス風力発電機の構造部材が発電時に受ける空気抵抗などを定量的に把握することで、構造強度を満たすと同時に、重量や空気抵抗を抑え、量産時の製造コストも低減できるという。構造部材の最適化にあたって両者共同で風洞実験などを実施する。