今回開発したRu/La<sub>0.5</sub>Ce<sub>0.5</sub>O<sub>1.75-x</sub>触媒の模式図
今回開発したRu/La0.5Ce0.5O1.75-x触媒の模式図
(出所:大分大学)
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開発した触媒と従来型触媒のアンモニア生成速度の比較
開発した触媒と従来型触媒のアンモニア生成速度の比較
(出所:大分大学)
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 大分大学らの研究グループは1月29日、再生可能エネルギー利用に適した温和な条件で、非常に高いアンモニア合成活性を示す新規触媒を開発したと発表した。開発した触媒は簡単に大気中で調製でき、取り扱いも容易なため、再エネを利用したアンモニア生産プロセスの実現が期待されるという。

 アンモニアは化学肥料の原料として重要な化学物質であり、近年は再エネの貯蔵・輸送を行うエネルギーキャリアとしても注目されている。従来の鉄触媒を用いたアンモニア合成プロセスは、極めて高温・高圧な環境下で反応が行われる。一方、再エネを利用した分散型プロセスでは、オンデマンドでアンモニアを製造する必要があり、温和な条件(325~400度、10~100気圧)でアンモニアを合成できる触媒が求められていた。

 今回開発した酸化物担持型触媒(Ru/La0.5Ce0.5O1.75-x)は、ランタン(La)とセリウム(Ce)の複合希土類酸化物を還元した担体にルテニウム(Ru)を担持し、従来知られていた最適値(500度以下)よりも高い温度(650度)で処理した。ルテニウム、ランタン、セリウムは、比較的安価で工業的にも広く利用されている。

 同触媒は、生成速度変換で従来型酸化物担持ルテニウム触媒の2倍以上のアンモニア合成活性を示したという。また、従来型のルテニウム触媒で問題となっていた水素による被毒の影響を受けにくく、10気圧程度の高圧雰囲気にすることでアンモニア合成速度が大幅に向上することを見出した。

 収差補正走査透過電子顕微鏡を用いた高分解能観察とスペクトル測定などの解析を行った結果、ルテニウムが2nm以下の微小なナノ粒子として担持されており、アンモニア合成反応の金属原子が触媒表面に豊富に存在していることが分かった。また、還元された担体がルテニウムナノ粒子の一部を被覆することで、担体とルテニウム粒子の間に働く相互作用が強くなり、反応活性が高まっていることが明らかとなったという。

 今後、今回の触媒設計を発展させることで、さらに高活性なアンモニア合成触媒が創製できると期待される。研究成果は、英国王立化学会(The Royal Society of Chemistry)のフラッグシップジャーナル「Chemical Science」オンライン版で1月29日(現地時間)公開された。