経産省の「決意」が見えた2018年

 国内太陽光発電業界にとって2018年は、経済産業省の“強い決意”が実行に移されたという意味で、固定価格買取制度(FIT)の運用上、転機となった年と言える。それは、上期・入札制度の上限価格に15.50円/kWhを設定して、結果的に「落札者ゼロ」となったこと。そして、「長期未稼働案件」への新たな措置により、FIT開始3年目までに認定された未着工案件について、事実上、買取価格を切り下げたことだ。

 これらの政策対応は、これまで経産省と太陽光デベロッパー(開発企業)との間で維持されていた、暗黙の“信頼関係”を裏切るものでもあった。

 上期・入札で非公開の形で設定された「15.50円/kWh」は、FIT開始以来、3~4円程度の下げ幅で推移してきた買取価格・算定の流れのなかで、「段差」のあるものだった。入札対象案件となった出力2MW以上の大規模案件のデベロッパーにとっては、2017年度の21円/kWhから、いきなり15.5円/kWh以下となり、5.5円以上の引き下げを求められた(図1)。

図1●太陽光の第3回入札(平成30年度下期)結果
図1●太陽光の第3回入札(平成30年度下期)結果
(出所:一般社団法人・低炭素投資促進機構)
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 また、長期未稼働案件への措置は、期限までに必要な手続きが済まなければ、買取価格の引き下げとなる。法令で決めた買取価格を事実上、遡及的に変更するもので、法律不遡及の原則からは、まさに「想定外」のことであった。経産省は、訴訟リスクやFIT制度への不信感を高める“禁じ手”を敢えて実施したとも言える。

 こうした経産省の「決意」の背景には、FIT賦課金による電気代上昇への産業界などからの強い批判、そして、世界的に見ると依然、高コストにある国内の太陽光発電に対し、エネルギー政策担当者としての“焦り”がある。

 一方で、太陽光の認定量が積み上がり、政府の掲げたエネルギーミックス(2030年のあるべき電源構成)の想定する太陽光の導入量・64GW(構成比7%)の達成も見えてきた。2018年に示した経産省の「決意」は、「世界的に見てあまりにコストの高い太陽光は今後、これ以上、認定しない」とのメッセージとも言える。その政策的な表れが、入札制度の対象拡大と、募集枠の引き締め、上限価格の低め設定となった。

 2019年以降の太陽光発電の市場動向を占う場合、まずは、こうした太陽光発電を巡る政策担当者の「意識変化」を念頭に置く必要がある。