米Apple社がiPhoneに有機ELディスプレーを採用する――。2015年11月末から12月にかけて、このような情報がディスプレー業界を賑わせた。現段階では推測要素が大きいが、同時期に2017年モデルの開発方針が変更になったもようであり、2017年以降の端末で有機ELディスプレーが採用される可能性は十分にある。

 Apple社が有機ELディスプレーの採用を急ぐ背景と考えられるのが、2016年以降、iPhoneの販売台数の成長鈍化が予測されることである。iPhone6が好評を博し、パネル生産が高止まりしていた2015年上期に対して、2016年上期のパネル生産は前年割れとなる可能性が出ている。廉価モデルの投入など早急な対策を打つとともに、革新性を維持するためデザインやフォームファクターなど中長期の製品戦略を見直す必要がある。

 ただし、有機ELディスプレーの採用にはさまざまな障壁が横たわっている。アクティブマトリクス駆動の有機ELディスプレー(AMOLED)は、韓国Samsung Display社がほぼ市場を独占している。同社以外では、韓国LG Display社や台湾AU Optronics社(AUO)、中国EverDisplay Optronics社(EDO)などが生産を行っているが、生産規模や顧客展開は今のところ限定的だ。製造装置や部品・材料のサプライチェーンが発展途上段階にあり、液晶ディスプレーに比べると供給メーカーが限られることから、急速な増産体制の構築は困難な状況にある。