科学技術振興機構(JST)と京都大学は12月8日、「ペロブスカイト太陽電池」と呼ばれる高効率太陽電池の不安定性を改善し、理論限界への設計指針を発見したと発表した。
ペロブスカイト太陽電池は、材料となる溶液を印刷することで容易に作製でき、製造コストを大幅に低減できる太陽電池として期待されている。20%以上の変換効率が報告されるようになり、次世代の太陽電池として注目を集めている。
しかし、測定条件によって太陽電池の性能を示す電流-電圧曲線(I-V曲線)が変わるため、発電特性と素子構造の関係を定量的に解明できなかった。
今回、JSTの「戦略的創造研究推進事業」において、京都大学の研究グループは、発電特性が変化しにくいペロブスカイト太陽電池を作製し、電流・電圧のロス機構を明らかにした。得られた設計指針を基に、エネルギー変換効率が結晶シリコン型太陽電池に迫るペロブスカイト太陽電池の実現が期待できるとしている。
変換効率19%以上のペロブスカイト太陽電池を使って発電メカニズムを解析した。電流については、変換ロスはほとんどないことが分かった。電圧については、電流の担い手である電荷キャリアを捕捉するサイト(トラップ)を介した電圧ロスが存在することが分かった。これによって、トラップの密度を一定以下に減らせれば、電流が発生する効率はほぼ100%で、電圧も理論限界まで向上する可能があるという。
研究では、比較的緻密で平滑なペロブスカイト膜を作製し、効率が高く再現性の良い素子を実現した。また、発電層を構成するペロブスカイト結晶の粒径による発電特性の変化を検討するため、負極にTiO2の緻密膜を採用し、素子構造を最適化した。
ペロブスカイト結晶の粒径が大きくなるほど、短絡電流密度(JSC)、開放電圧(VOC)、曲線因子(FF)のいずれも大きな値を示し、エネルギー変換効率は、粒径が最も大きな500nmの時に、世界最高レベルの19.4%を示した。