マツダ常務執行役員の人見光夫氏
マツダ常務執行役員の人見光夫氏
ダウンサイジングした理由を熱心に説明
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 マツダは2015年12月8日、北米で来春に発売する新型SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)「CX-9」に搭載した排気量2.5Lの過給ガソリンエンジンを開発した狙いを説明した。従来は同3.7LのV型6気筒エンジンで、“ダウンサイジング”した格好だ。マツダはかねて、ダウンサイジングエンジンに踏み切らなかった。なぜ開発に取り組んだのか。

 マツダ常務執行役員の人見光夫氏は、排気量を減らして機械損失を抑え、出力低下分を過給器で補うダウンサイジングエンジンについて、これまで「モード燃費に優れるが、実用燃費が悪い」と主張してきた。過給すると燃焼圧力が高くなり圧縮後の温度が上昇。異常燃焼(ノッキング)しやすくなる。このため圧縮比を下げねばならないからだ。「排気量3割減のダウンサイジングで圧縮比は2~3、同5割減で5程度下がる」(人見氏)という。

 圧縮比が下がると、走行する全域でエンジンの熱効率は下がってしまう。ただエンジンの排気量を減らしてダウンサイジングすると、機械損失の寄与率が大きな軽負荷域では、圧縮比低下に伴う熱効率悪化分を機械損失の低減分が上回る。モード燃費試験は、軽負荷域で走る比率が高い。このためダウンサイジングエンジンは、モード燃費性能を高めやすくなる。

 一方、機械損失の寄与率が低い高負荷域では燃費性能は悪くなる。圧縮比が下がることによる効率低下分を機械損失の低減分で補えないからだ。実走行時は、軽負荷域も高負荷域もともに使う。マツダが、ダウンサイジングエンジンは「実燃費性能が悪くなる」(人見氏)と考える最大の理由だ。同エンジンの「圧縮比をむりやり高めても軽負荷域は良くなるが、高負荷域はもっと悪くなる」(同氏)という。

 しかもダウンサイジングすると、コストが高くなる。ターボチャージャーやインタークーラーを追加することに加えて、ピストンやコンロッド、クランクシャフトなどの強度を高めねばならない。