ブリヂストンは、免震ゴム製品の開発や、建物に組み込んだ状態での挙動の予測に利用しているCAEソフトウエアについて、詳細を明らかにした。開発担当者が独自に研究したゴムのモデルを、市販の非線形構造解析ツールに組み込んで計算する(関連記事)。2015年9月に発表した免震ゴム「高減衰ゴム系積層ゴムX3R」の開発にも利用した。

 免震ゴム製品は、円盤状のゴムと鋼板を交互に重ねながら円柱形に積み上げた構造で、建物の基礎と床下の間に入れる(図1)。通常時は建物の重さを支え、地震時には自ら変形することで基礎から建物へ伝わる振動を減衰する(図2)。地震時の変形は非常に大きく、例えば1000年に1度発生する地震に対しては、製品のゴム部の厚さに対して、その2.5倍もの横方向の変形(円柱の底面と天面のずれ)が生じる。

図1 免震ゴム製品の外形
図1 免震ゴム製品の外形
八角形のフランジは、円形のものよりも設置場所をコンパクトにできる。円形でなくても大丈夫かどうかなどを、CAEで解析できる。
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図2 高減衰ゴムの履歴曲線
図2 高減衰ゴムの履歴曲線
力がかかって縮んだあと、力が抜けて元に戻ろうとするときに、急に元の通りに伸びるのではなく、やや縮みが残った状態のままでゆるやかに延びる(このときに振動を減衰できる)。この様子を表した曲線。
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 この免震ゴム製品に使うゴムは、高減衰ゴム(HDR、High Damping Rubber)と呼ばれ、大変形が生じると同時に、粘性(圧縮した後、力を抜いてもすぐには元に戻らない)によって地震動を減衰させる性質を持つ。解析計算を実行する上では、このHDRの性質をモデル化してCAEソフトに組み込む必要がある。ところが、市販のツールで利用可能な「超弾性モデル」は、大変形によるひずみは考慮できても、粘性までHDRにはぴったりと合うものではなかった。